「TENET テネット」のブルックス・ブラザーズへの指摘は何だったのか?

名もなき男に情報提供するマイケル・クロズビー卿

Image: Youtube/Warner Bros. Pictures/(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved

TENET テネット」に出てくる、スーツブランドのブルックス・ブラザーズ。

イギリス上流階級に潜り込むには、ふさわしいスーツが必要。クリストファー・ノーラン監督は、その説明をおしゃれに盛り込みました。

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なぜブルックス・ブラザーズではダメなのか?

ブルックス・ブラザーズ、マイケル・ケイン、イギリス。この3つの要素だけでノーラン監督は、イギリスにとってスーツは譲れないものであることを、短くおしゃれに演出しています。

ブルックス・ブラザーズはアメリカのスーツ

「TENET テネット」で名もなき男が着ているブルックス・ブラザーズ

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マイケル・ケイン演じるマイケル・クロズビー卿は、セイター相手に世界を救う服装としては、ふさわしくないものとして指摘しています。

ブルックス・ブラザーズは、ニューヨークで誕生した紳士服販売店です。いまから203年前の1818年に創業した、世界最古の紳士服販売ブランドです。リンカーン大統領も着用した、アメリカを代表するテーラーです。

ブルックス・ブラザーズジャパンのパーソナルオーダーでは、スーツ1着99,000円~。1着1万円で購入できる量販店と比較すると、高級スーツといえます。

しかしマイケル・クロズビー卿は「気を悪くするな 富豪たるものスーツにもこだわる」と言い、ブルックス・ブラザーズのスーツを否定しています。

セイターがいるのはイギリス上流階級

名もなき男と初めて話すセイター

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一方、セイターは妻キャットの地位を利用し、イギリス上流階級に潜り込んでいます。クロズビー卿の指摘は、そのセイターに近づくためには、まずは服装がそれなりでないといけないというものです。

その後名もなき男は初めて会ったキャットに、恐らく嘘の身分を見抜かれ「分不相応」だと言われてしまいます。しかしイギリス上流階級にふさわしい服装を、身に付けていたということになります。

イギリスにはオーダーメイドの名門高級紳士服店が集まる、サヴィル・ロウという通りがあります。例えばその11番地にあり、スパイアクション映画「キングスマン」の舞台となったハンツマン。日本でも購入することができ、そのオーダー価格は、伊勢丹では313,200円~となっています。

サヴィル・ロウのスーツは、ブルックス・ブラザーズの3倍の値段がします。しかしクロズビー卿の言葉には値段だけではなく、イギリスのプライドも込められています。

イギリスとマイケル・ケインとスーツ

「TENET テネット」イギリスで仕立てた名もなき男のスーツ

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16世紀のイギリス、農民が作業のときに着た丈の長い「フロック」が、スーツの起源と言われています。それから貴族や軍隊などが着用し、形を変え、19世紀にいまのスーツの原型ができたそうです。

またクロスビー卿を演じたマイケル・ケインは、サーの称号を持っています。長年クリストファー・ノーラン作品に出演し、紳士がテーマのキングスマンでは、司令官として出演しています。

そんなマイケル・ケインが紳士として、スーツについて名もなき男にアドバイスをするシーン。イギリス出身であるノーラン監督によって、イギリス文化がさりげなく演出されています。マイケル・ケインが演じるからこそ、短時間でも軽くなりすぎず深みがあり、スーツはイギリスのものだぞというプライドを感じるシーンになっています。

イギリスのプライド

世界最古の紳士服販売店である、アメリカのブルックス・ブラザーズ。スーツの起源であるイギリス。マイケル・ケインが演じることで、歴史と文化の重みでは負けないぞ、というプライドを感じます。