「TENET テネット」の続編はなく、何かの続編でもないと言える理由

「TENET テネット」の吹き替えはBD、DVD、デジタルに収録

Image: Youtube/ワーナー ブラザース 公式チャンネル

TENET テネット」(2020年製作)は、クリストファー・ノーラン監督の過去作である「メメント」(2000年製作)や「インセプション」(2010年製作)、「インターステラー」(2014年製作)の続編なのか。そして「TENET」の続編が製作される可能性はあるのか。

そのどれも可能性はゼロといってよいのではないかということを考察します。

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「TENET テネット」は新たな時空間の見方

監督の頭の中では、作品を製作するときに過去作の概念が下積みになっている可能性はあると思います。しかし「TENET」は続編ではなく、新たな概念を提示している作品であると思います。

続編がないからこその作風

「TENET テネット」逆行弾をキャッチする名もなき男

Image: Warner Bros. Pictures/YouTube/(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved

「TENET 」はクリストファー・ノーランが、続編の可能性を示唆した初めての作品のようです。そして主人公の名もなき男を演じたジョン・デヴィッド・ワシントンも、続編があるならぜひ参加したいとEsquireで答えています。

しかし「TENET 」は、今回の終わり方で完璧だと思えます。

時間の逆行によって、過去に戻ることも未来に進むこともできる「TENET 」。最後にニールが名もなき男に言ったセリフ「君は作戦の中間点にいる」。このセリフをそのまま受け取ると、何も知らなかった名もなき男はすべてを知り、「TENET 」の物語はこれからニールと出会い、プリヤに陰ながら指令を出すという壮大なものを想像できます。

タリンでのカーチェイスで奪い合った241、アルゴリズム

Image: Youtube/(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved

映画では描かれていませんが、名もなき男の壮大な時間による挟み撃ちの目的は、アルゴリズムの存在をなくすことだったと考えられます。アルゴリズムの存在をなくすためには、アルゴリズムに関するあらゆる情報を消す必要があります。最後にアイブスが、3つに分けたアルゴリズムそれぞれを隠した後に自死しろ、と言っていたのもそのためです。名もなき男はプリヤを返り討ちにした直後「任務完了」と言います。

ニールと出会うところや、プリヤに指示を出すところは描かれていませんが、実は名もなき男が目的としていた「アルゴリズムの存在をなくすこと」は最後に完了していたと思います。続編を作ってほしいと思わせるほどの余白はありますが、「TENET 」は単独で完結している作品です。

ノーラン監督は続編を作らない

「TENET テネット」IMAX撮影

Image: ワーナー ブラザース 公式チャンネル/YouTube

クリストファー・ノーラン監督は、これまで続編を作ったことがありません。「ダークナイト・トリロジー」を除いて。

作品内の途中のシーンも含めて、すべてを描くのではなく、観客の想像にゆだねる手法を好みます。

あまりに描写が少ないと、思わせぶりなだけの作品になってしまいます。しかしノーラン監督は、しっかり描く部分と、あえて描かない部分とのバランスがとてもうまいです。

気になる余白を残すことで、自然と頭の中で考えるようになり、映画の世界への没入感をより感じられるようにしています。

メメント、インセプション、インターステラーとの関係

「インターステラー」(2014年製作)

Image: Warner Bros. UK & Ireland/YouTube/(C)2014 Warner Bros. Entertainment, Inc. and Paramount Pictures. All Rights Reserved.

「TENET 」と同じように時系列や時間軸、次元、空間を扱った過去作に「メメント」や「インセプション」、「インターステラー」があります。

「メメント」では10分の記憶で、時系列による時間の新しい考え方。「インセプション」では人の脳内に何層にも侵入する、複雑な空間のアイデア。「インターステラー」では重力を解明することで、時間も次元も超えた捉え方が扱われています。

そして「TENET 」では、時間軸に対する逆行という新しいアイデアによって、時系列や時空に対する世界の新たな見方をみせてくれています。

過去作と直接的な関連はありませんが、クリストファー・ノーラン監督の頭の中では、時空に対する考え方がどんどんアップデートされているのではないかと思います。

続編や後日譚が気になる作風

クリストファー・ノーラン監督は、基本的に続編を作らない監督です。しかし何か続きのような後日譚のようなものが、必ず気になる作品作りをしています。その手法は映画を観たあとも、映画の中にいるような没入感を生んでいます。