
アクションだけでなく世界中を旅する映画でもある『ミッション:インポッシブル』シリーズ。6作目である『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(2018)でも世界中の建築、絶景を背景にストーリーが展開される。
本作ではロケ地に関して変わった製作手法がとられており、監督のクリストファー・マッカリーの言葉とともにロケ地を紹介する。
「場所が物語を創る」マッカリー監督の哲学と『フォールアウト』のロケ地舞台裏
マッカリー監督はイーサンとジュリアのオープニングシーン以外は、ロケ地を決定してから脚本を考えたと明かしている。
I’m not going to start writing the screenplay. until I know where I’m going to shoot it.
EXCLUSIVE INTERVIEW: ‘Mission: Impossible – Fallout’ Director Christoper McQuarrie (SPOILERS) – YouTubeより引用
[どこで撮影するかが決まるまでは脚本を書き始めるつもりはありません。]
「どんなに良いアクションを考えても、それを撮影する場所を決めることができなければクルー全体が本当にイライラする状況に陥ってしまう」と、前作『ローグ・ネイション』での経験を活かしている。
【ノルウェー】衝撃のラスト!”カシミール”の断崖絶壁になった絶景の舞台裏
映画のクライマックスの山場は、ノルウェーの有名なランドマークであるプレーケストーレン(英:パルピットロック)で撮影された。マッカリー監督はニュージーランドで求めるような「落ちる」ことができる崖が見つからず、最終的にこの場所が選ばれた。
【フランス・パリ】芸術の都を駆け巡る!イーサン・ハントの足跡
本作には、カーチェイスやバイクチェイスの一部が含まれ、パリが主要な舞台の一つとなった。
グラン・パレ
劇中に登場するグラン・パレは、ホワイト・ウィドウのパーティーシーンの主要な舞台であり、HALO(高高度降下低高度開傘)ジャンプ後の着地場所としても設定されていた。当初、グラン・パレではグラップリングフック(かぎなわ)を使ったスタント(トム・クルーズとヘンリー・カヴィルが降下するシーン)も予定されていたが、最終的に本編からはカットされた。
トロカデロ広場
ウォーカーがCIA長官エリカ・スローンと会う場所。ウォーカーはイーサンがジョン・ラークである可能性をスローンに告発する。
パレ・ロワイヤル庭園
イーサンとイルサが密かに会う場所として登場する。イーサンのイルサへの思いと、イルサのMI6から逃れられない苦悩が明かされる。
サン=ミッシェル通り
ホワイト・ウィドウとイーサンが対面するセーヌ川沿いの通り。二人が会話する背景にはノートルダム大聖堂が見える。
パリの博物館、オテル・ド・スービーズ(ホワイト・ウィドウの邸宅)
イーサンがプルトニウムを手に入れるため、ジョン・ラークとしてホワイト・ウィドウの邸宅へと招かれるシーンに登場する場所が、National Archives Museum – Hôtel de Soubise。
ソロモン・レーン移送経路のルート
ベルシー橋。地元警察がソロモン・レーンを移送する一部の背景として登場する。
サン・マルタン運河。ベンジーやルーサーがソロモン・レーンをボートにのせて、地下水を進むシーン。
パッシー駅下(ガレージ)。女性警官が撃たれイーサンが許しを請う印象的なシーンに登場する場所。
54 Rue du Rocher(ロシェ通り54番地)。イルサがソロモン・レーンを狙撃するために待ち伏せる場所。
Gal de Valois(ヴァロワ通り)。イルサがバイクで猛スピードで追いかけるシーン。
【イギリス・ロンドン】トムが骨折!俳優魂が刻まれた緊迫の追跡劇
Pennington St Warehouse(ペニントン・ストリート倉庫)
IMFのハンリー長官と落ち合う場所。
屋上シーン
オーガスト・ウォーカーがジョン・ラークだと判明し、イーサンが全力で走って追いかけるシーンは葬儀が執り行われているセントポール大聖堂から始まる。
ベンジーの誘導の元地上から屋上まで来てしまったイーサンが、建物の間を大ジャンプするシーンとして登場。トム・クルーズはこのアクションで右足首を骨折したことでも知られている。
【ニュージーランド】絶景のヘリバトル!もう一つの”カシミール”はこうして生まれた
クイーンズタウンから車で1時間半ほどのThe Rees Valley(リース渓谷)。イーサンがジュリアと再会するカシミール地方の難民キャンプ地として登場。
ヘリコプターチェイスは、南アルプスの険しい渓谷を通り抜け、クイル湖やサザーランド滝付近でも撮影されている。
ニュージーランドには経験豊富なパイロットが多く、低高度飛行や複雑な操縦を可能にしたことが、ニュージーランドが選ばれた重要な理由の一つ。トム・クルーズはこのシーンのために、ニュージーランドのパイロットと共に訓練を受けた。また撮影開始前には、現地のマオリ族による歓迎セレモニー(Powhiri)が行われた。
Just after dawn on the first day of shooting, the local Māori iwi (tribe) led by Chief David Higgins performed a “Powhiri,” a Māori welcoming ceremony.
Mission: Impossible – Falloutより引用
[撮影初日の夜明け直後、デビッド・ヒギンズ酋長率いる地元のマオリ族イウィ(部族)がマオリの歓迎の儀式「ポウィリ」を執り行いました。]
【アラブ首長国連邦】常識を覆す超高高度ダイブ!HALOジャンプの真実
グラン・パレに向かう前、ハンリー長官と話す飛行場は、ブライズ・ノートン空軍基地。
C-17軍用機から飛び降りるHALOジャンプはアブダビ(アラブ首長国連邦)で撮影が行われた。高度27,000フィートからのジャンプは、酸素吸入や低酸素症の危険を伴う困難な撮影であったことをオーガスト・ウォーカーを演じたヘンリー・カヴィルが明かしている。
ロケ地が映画を創り、映画がロケ地を伝説にする
本作ではマッカリー監督はロケ地から物語を始めることを決めた。このアプローチによって、れぞれの場所が持つ独特のエネルギーが、いかにして予測不可能で有機的な物語とアクションを生み出すことにつながっている。
多様なロケ地が「実践的なスタント」と「壮大なスケール」を支え、観客に強烈な没入感を与えている。