「TENET テネット」で矛盾を感じるセイターの時間軸を考察します

船にいるセイター

Image: Youtube/(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved

時間SF映画「TENET テネット」(2020年製作)でセイターは、主人公名もなき男とのカーチェイスで、先回りして現れます。また、このタイミングでキャットに撃たれたということは、その後のタイムラインでなぜ生きているんだ?と矛盾を感じるポイントがあります。

「TENET」の映画内事実として、時間軸は名もなき男の目線1つであることを前提に、セイターの時系列を考察していきます。

※この記事にはネタバレを含みます。

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「TENET」の時間軸は1つ

船から名もなき男をみるセイター

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10代のころから、核弾頭をがれきから掘り起こしていたセイターは、未来人からの秘密のポストを見つけます。未来人と金塊で契約したセイターは、アルゴリズムを集め、名もなき男とカーチェイスを繰り広げ、最後は妻のキャットに撃たれてベトナムで死亡します。

10代のセイターの過去

地図から消えたロシアの街スタルスク12で、セイターは10代のころから核弾頭をがれきから掘り起こす仕事をしていました。そのがれきの中から未来人と通じる秘密のポストを発見します。

ポストの中にはセイター宛の契約書と報酬の金塊が入っていました。しかし契約書に書かれていた名前がセイターなのであり、本当の名前はセイターではないかもしれません。

はじまりはオペラハウス

「TENET」オペラハウス

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セイターはオペラハウスの偽装テロまでに8個のアルゴリズムを集めています。偽装テロのどさくさで9個目のアルゴリズムを奪うつもりでしたが、地元当局や名もなき男の邪魔が入り取り逃がします。セイターは間接的に名もなき男と接触していました。

時系列に矛盾を感じるカーチェイス

アルゴリズムを奪い合うカーチェイス

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次に名もなき男とセイターが会うのは、イタリアのアマルフィです。そこでセイターは、名もなき男に9個目のアルゴリズムを、ウクライナ保安庁から奪う手伝いを約束します。タリンでの壮絶なカーチェイスにより、セイターはウクライナ保安庁が運ぶアルゴリズムを、名もなき男から奪います。

ここでセイターの時間軸に矛盾を感じます。なぜなら名もなき男の行動を部下から報告を受けているセイターは、まだ倉庫にいるはずだからです。

フリーポートの倉庫で身を隠すセイター

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ここで1つの仮説は、映画「TENET」では、情報をもとに時系列的には未来のことを起こすことが可能だということです。研究者バーバラから、名もなき男が初めて時間の逆行について説明を受けるシーンがありました。このとき机に置かれた弾丸を吸い込むようにキャッチするシーンがありました。最初手をかざしただけの名もなき男は、銃弾をキャッチできませんでした。しかしバーバラから「まだ落としていない」と言われ、自分が落としたという情報を知っただけでキャッチできるとうシーンです。

逆行のセイターと順行のキャット

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名もなき男がウクライナ保安庁からアルゴリズムを奪う様子を、セイターは部下に監視させ、その情報をリアルタイムで聴いていました。この情報を武器に時系列的にはまだ起こっていない未来で、名もなき男の目の前にキャットを人質に現れることができました。

回転ドアがある倉庫で、検証窓を隔てて名もなき男はセイターに、アルゴリズムのありかを話しました。しかし物陰から現れたセイターは、アルゴリズムがどこにあるのかまだ知らず、名もなき男を拳銃で殴りました。このことからもカーチェイスでアルゴリズムを奪いに現れたセイターは、まだ起きていない未来のセイターだったと推測できます。

失踪先はベトナム

最終的に9個のアルゴリズムすべてを集めたセイターは、いよいよアルゴリズムを起動するために、スタルスク12にアルゴリズムを集めます。その後セイターは失踪しますが、オペラハウスの偽装テロがあったときと同じ日時、息子マックス、妻キャットと船でベトナム旅行をしていたときまで時間を逆行していることが、キャットの情報からわかります。

「TENET テネット」にでてくるCIAの銀カプセル

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通常のセイターはオペラハウスの偽装テロのために船を降り、通常のキャットはセイターとの口喧嘩のために船を降りています。逆行しているキャットは通常のキャットになりすまして船に乗り、逆行しているセイターも通常のふりをして船に現れます。

セイターがCIAからもらったカプセルで自殺してしまうとアルゴリズムが起動してしまうため、キャットはセイターが死なないように引き留めます。しかしキャットはアルゴリズムを名もなき男が奪えたかどうかを確認する前に、耐えきれなくなりセイターを撃ってしまいます。

最後の謎、なぜ生きているのか

セイターを足止めするキャット

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最後、ここで時系列的に最新のセイターは、死んでしまいますが、通常のセイターはその後もなぜ生きているのかという疑問が生まれます。これは「TENET」の時間軸は1つであり、同じ時系列を繰り返しているわけではないからです。

時間軸として、オペラハウスの偽装テロ、ベトナムの船でのセイターの銃撃、これらは同時に起こっていると考えられます。しかし名もなき男目線の時系列としては、オペラハウスとセイターの銃撃は順番に起こっています。セイターがキャットに撃たれる未来はあったかもしれませんが、オペラハウスの時点ではまだ撃たれていません。だから映画冒頭でセイターがまだ生きていることは矛盾していないと考えられます。

セイターの複雑な時系列

セイターは「TENET」のなかで、一番時間の逆行を使いこなしています。だからこそ複雑な時系列が生まれ、考察しがいのある作品になっています。