ラビットフットの正体は伏線だった?『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』を監督の哲学で深掘り

ラビットフットの正体は伏線だった?『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』を監督の哲学で深掘り
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トム・クルーズの超絶アクションで世界を沸かせる『ミッション:インポッシブル』シリーズ。その最新作にして集大成となる『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』がいま公開された。

しかし、このシリーズの“本当の凄さ”は、アクションの裏に隠されているのかもしれない。

仕掛人は、監督のクリストファー・マッカリー。『トップガン マーヴェリック』の共同脚本として参加したこの天才は、実は「安易なファンサービスは物語の毒だ」と言い切るほどの“職人肌”。

そんな彼が、もし本作で“20年越しの禁じ手”を使っているとしたら…?

ファンの間で長年議論されてきた、シリーズ最大の謎「ラビットフット」。この記事では、監督自身の言葉を手がかりに、この伏線に隠された“本当の意味”を考察していく。

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仕掛人は監督マッカリー|「ファンサービスは毒」の哲学とは?

『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』仕掛人は監督マッカリー|「ファンサービスは毒」の哲学とは?
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まず知ってほしいのは、この物語の舵を取るクリストファー・マッカリー監督が、ただのヒットメーカーではないということです。トム・クルーズの最強の相棒とも呼ばれる彼は、観客を物語に没入させることに関しては、誰よりもストイックなプロフェッショナル。

彼はかつてファンサービスを取り入れることについてこう語っている。

致命的なものだ。ただし、ごくごく強いスパイスのように、慎重に使うなら効果的だ。他の作品を観ていれば楽しめるだろうが、それを前提にはしていない。なぜなら、過去作への言及を挿入するとどうなるかというと――観客に、今目の前の物語から一度離れて、別の物語を思い出させ、それからまた戻ってきてもらう必要が生じる。そのこと自体が危険なんだ

出典:『ミッション:インポッシブル』最新作の監督、「ファンサービスは物語の毒」と語る – THR Japan 2025年7月8日閲覧

プロデューサーでもあるトム・クルーズとマッカリー監督がこだわるのは、観客にスクリーンの世界に没入してもらうこと。ファンサービスはその中で過去作へと観客の意識が飛んでしまい、作品の連続性が絶たれてしまうと監督は考えている。

そもそも伏線の鍵“ラビットフット”とは?

『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』そもそも伏線の鍵“ラビットフット”とは?
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ラビットフットとは約20年前の映画『M:i:III』(2006年)に登場した、”正体不明のカプセル”だ。

劇中では、その正体は最後まで明かされることはなかった。分かっているのは、世界を破滅させかねないほどの危険な「何か」であることだけ。当時、ただのひとりのテクニカルエンジニアとして登場したベンジーは、解析したデータを見てなにかわからないが「アンチゴッド(神に逆らうもの)」と警告していた。

結局、中身は謎のまま。この「ラビットフット」は、シリーズ最大の伏線として、ファンの間で20年間も「あれは何だったのか」「バイオハザードだ」「生物兵器だ」と議論され続けてきた。

ファイナルレコニングで“ラビットフット”に触れる本当の意味

『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』で“ラビットフット”に触れる本当の意味
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「ファンサービスは毒」と語るこだわり抜いた監督が、もし本作『ファイナル・レコニング』で、この”ラビットフット”という、いわばシリーズ最大のファンサービス要素に、あえて触れるとしたら…?

それは単なる懐かしのアイテムの再登場ではない。
物語の心臓を撃ち抜く、“必然”があるはず。

「ラビットフットの正体=エンティティ」という伏線

そして今作『ファイナル・レコニング』で明かされた衝撃の事実が、あの“ラビットフット”の中身こそ、最新作の敵であるAI『エンティティ』の原型ということだった。(関連記事:「『デッドレコニング PART ONE』最恐の敵、AI「エンティティ」とは何者か?その正体と真の目的を徹底解剖する」)

『デッドレコニング PART ONE』そして本作を観た方ならご存知の通り、「エンティティ」とは、インターネットの海に潜み、世界のあらゆるシステムを支配できる、神出鬼没のデジタルゴースト。まさに人類の手に負えない、最強最悪の敵。

20年前の物理的な「カプセル(脅威)」が、現代のデジタルな「怪物(脅威)」を生み出した。このシリーズにとって最大の伏線ともいえるファンサービスによって、物語は驚くべき繋がりを見せた。

なぜこの伏線が“最高のスパイス”なのか?

『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』なぜこの伏線が“最高のスパイス”なのか?
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この「ラビットフット=エンティティ」が、監督の言うところの「ファンサービスは毒」ではなく、マッカリー監督の哲学に合致した、“最高のスパイス”となっている。

物語の“厚み”として

点と点だった過去の事件と現在の危機が、20年の時を超えて一本の線になる。バラバラに見えたイーサンの戦いが、実は一つの巨大な物語だったと明かされる。この壮大さ。

主人公の“宿命”として

イーサン・ハントは、知らず知らずのうちに、自らが過去に関わった”呪い”が生み出した最大の怪物と、再び対峙することになる。エンティティに仕えるガブリエルも1作目よりもさらにイーサンの過去と関りがあるキャラクターだ。

これまでシリーズは1作品で完結を基本としてきたが、1作目からすべてがつながっている演出は本作が「ファイナル」とつく集大成にふさわしいものとなっている。(関連記事:「イーサンは”人間の過ち”を終わらせるか。『ファイナル・レコニング』に隠された本当のテーマ」)

没入感を“破壊”しない

「懐かしいな」で観客を現実に引き戻す、ありきたりなファンサービスではない。「そういうことだったのか!」という巨大な衝撃が、観客を物語の渦の中心へと、さらに深く引きずり込んでいく。これこそ、監督が唯一認める”効果的なスパイス”ではないだろうか。

まとめ

もちろんこれは1つの考察だ。過去からの引用ばかりでつまらなく感じた方もいるかもしれない。しかしただの過去作からのオマージュや単なるファンサービスではなく、そこには物語として意味があると感じるとより壮大なストーリーとして本作を楽しむことができる。