Image: Youtube/Warner Bros. Pictures/(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved
難しすぎる!と話題になった「TENET テネット」(2020年製作)。
「TENET」を難しく感じるのは、時系列を複雑に感じるからです。それをシンプルにしてくれるのが、時間軸は1つということです。
唯一の時間軸とは、名もなき男の目線です。それを前提に、わかりづらい4つのシーンに絞って解説します。
名もなき男目線でみる難解な4つのシーン
「TENET」に出てくる最も重要なアイテムが、アルゴリズムです。
このアルゴリズムを可能としている「TENET」のなかでの科学、時間の逆行が理解を難しくしています。時間の逆行によって、冒頭のオペラハウスのシーンや、カーチェイスでの出来事、最後の最終決戦などが起きる時系列がバラバラにみえます。
そこで時系列をシンプルにしてくれるのが、主人公名もなき男の目線でストーリーを追うことです。これはノーラン監督もインタビューで公言しています。名もなき男の目線での時系列は
- オペラハウス
- カーチェイス
- 最終決戦
- ラストシーン
ということになります。
それぞれのシーンの、あらすじ全体での意味をできるだけ簡単に解説します。
冒頭のオペラハウス(アルゴリズムをめぐる戦いの始まり)
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オペラハウスのシーンは、冒頭のオープニングとしては大迫力で文句のないシーンです。しかしストーリーとしては何の意味があったのかというシーンでもあります。
そこには、3つの伏線が含まれていました。
- 赤い紐のストラップをつけた謎の人物
- すでに始まっていたアルゴリズムをめぐる戦い
- 実はスタルスク12での最終決戦と同じ日
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名もなき男がスパイと疑われたとき、壁に埋まっていた銃弾が飛び出し助かります。この逆行弾を撃った?キャッチした?のが、リュックに赤い紐のストラップをつけた謎の人物です。このストラップを見逃していると、最後のシーンでニールのリュックにも赤い紐のストラップがついていることにつながりません。
またこのシーンは名もなき男のTENETへの参加テストだけにみえますが、すでにセイターとのアルゴリズムをめぐる戦いは始まっています。名もなき男を拷問していた男たちもおそらくセイターの手下です。
そして最後のスタルスク12での最終決戦と同じ日であることです。これは時間の逆行が可能な「TENET」最大の醍醐味です。オープニングシーンとクライマックスが、実は同じ日に起きているなんて「さすがノーラン」という感じです。
全然わからないカーチェイス
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セイターとアルゴリズムを奪い合うカーチェイスのシーンはとにかく、情報を知られることが弱点になるんだぞ、というシーンです。
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逆行弾をくらったキャットを助けるためにオスロ空港のロータス社の倉庫にある回転ドアに戻るまでの怒涛の時間の逆行を観たときに「おぉ!TENETってそういう映画なのか!」と理解はしてないけど、衝撃を受けた記憶はあります。
このシーンが複雑でわかりづらいのは、セイターが二人いるようにみえることです。実際には部下からの情報を知ったセイターが、未来で時間を逆行し、さらにそのセイターが巻き戻っている姿なのですが。これが時間による挟み撃ちです。だからとにかく「TENET」では、情報を知られることが一番危険なことだということです。
そして名もなき男に指示を出していたプリヤにとって、アルゴリズムを奪うことが本当の目的ではありませんでした。セイターにアルゴリズムを集めさせ、1か所(スタルスク12)に集中させることが目的です。
スタルスク12での最終決戦では、これら順行、逆行、時間による挟み撃ちなどの時間の逆行による仕掛けのオンパレードです。
伏線がつながっていく最終決戦
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スタルスク12での最終決戦では、いよいよ敵味方、順行逆行が入り乱れます。ありとあらゆる場所で時間の逆行が起こっていて、「TENET」のすべての要素が詰まっています。
いきなり最終決戦のシーンをみせられても「何かすごいけど全然わかない!」となるシーンです。でも同じようなことを一応カーチェイスのシーンでみせてくれています。説明の少ないノーラン作品とはいえ、ノーランの多少の優しさです。こういうところでも説明のためだけのシーンにしないのが上手いと感じます。ホントに何が起こっているかは、映画館やDVD、Blu-rayで何回も観てやっと把握できる複雑さだとは思います。
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そしてこの最終決戦を終えたニールから多くのことが語られます。赤い紐のストラップをつけた謎の人物とニールとの結びつき。赤い紐の人物は最終決戦でも名もなき男を助けてくれています。アルゴリズムを最後に手にしたものは死ぬ運命にあること。これら作戦のすべてを考えたのが、名もなき男であること。あの何もない荒涼とした場面でこれらが語られるのは、すごく感動的なシーンです。
ニールは名もなき男に、ここは壮大な時間挟撃作戦の中間点だと言います。アルゴリズムが起動しない過去を作ることができたいま、残っているのはアルゴリズムに関する情報を消去する任務です。
プリヤ暗殺のラストシーン
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プリヤがキャットを暗殺しようとするラストシーンは、すべての任務が完了します。
「TENET」は情報が最大の武器です。アルゴリズムの脅威をなくすためには、アルゴリズムの情報を消してしまうのが一番です。だからプリヤは知りすぎたキャットを暗殺しようとしました。TENETの黒幕として。
しかし本当の黒幕は、名もなき男でした。自分でも「主役は俺だ」と言っていましたね。そのためプリヤは逆に名もなき男に抹殺されます。アルゴリズムに関する情報を消去し、名もなき男の任務は完了しました。
難しいから簡単に
「TENET」は確かに難解で難しくわかりづらい作品だと思います。それでも何回も観たくなり「おっ、何かわかったかも」となっていく面白さがあります。正解なんてなくても、自分がわかればいいと。そのわからなさを楽しむ映画です。
TENET テネット(字幕版)
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