「まく子」感想|子ども視点の大人になることへの不安

西加奈子さんによる小説「まく子」を原作とし、鶴岡慧子監督が映画化。

大人になりたくない小学生5年生のサトシの前に現れたのは転入生のコズエ。ちょっとおかしなコズエと触れ合ううちにサトシの心も変化していく。

サトシを山崎光さん、コズエを新音さんが演じています。そしてサトシの父親を草彅剛さん、母親を須藤理彩さんが演じており、コズエの母親をつみきみほさんが演じています。その他、ドノという町の変わり者を芸人コンビしずるの村上純さんが演じています。

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「まく子」感想(ネタバレあり)

大人でも漠然と抱いている将来への不安というのを子どもの視点から描いた映画てす。

サトシが大人になるのが嫌になったきっかけっていうのがあって、それを許せるのかどうかっていうのが描かれています。そこに新音さん演じるコズエとの交流でジュブナイルっぽさも出しながら、子どもが少し大人になっていくドラマでもあります。

なんでコズエはあんなにサトシの顔を見てたんだっていうのがつながるエンディングは、なるほど!と思いました。

大人でも共感する将来に対する不安

サトシにとって一番身近な大人は自分の父親なわけで、その父親がとんでもなくだらしない男。サトシはその父親の子どもなわけで、将来自分は父親みたいな大人になりたくないと。そりゃ確かに今のままが良いと思うかもなと共感します。

ただそこで転入生のコズエと出会うことで自分の考えが覆されるっていうのが面白いところです。

普通、自分の中の社会、常識だと思っていることと全く違う人と出会うと衝突するように描かれることが多いんですけど。サトシとコズエの場合、どちらかがどちらかをいじめるだったりがあってもおかしくないと思います。

それが「まく子」ではコズエは、普通に考えたら支離滅裂だけど、サトシが成長する助けになってくれているんですよね。それが子ども視点で将来への不安や大人になることを描いている意味だと思います。

山崎光、新音そして草彅剛

その自分を宇宙人だというコズエを演じた新音さんは、はまり役でした。無邪気に落ち葉をまく姿から、じっとサトシ役の山崎光さんの顔を覗き込む姿まですごく振り幅のある表情です。

サトシ役の山崎光さんもすごく難しい役だったと思います。撮影当時の年齢を考えると役者といえど抵抗のある撮影もあったのではないかと思います。父親への不満や体の成長に心が追いつかない表現など。すごく素直な演技です。

草彅剛さんが出てきた時はびっくりしました。映像としてはそんなに出てこないんですよね。ただ画面に現れた瞬間からの存在感っていうのはやっぱりすごいなと。草彅剛さんはそんなに主張をするわけでもない役どころだったんですけど、その場の空気を締めてくれるといいますか。すごい俳優さんです。

サトシが嫌いな町の大人としてドノという人物が登場します。その人物を芸人コンビしずるの村上さんが演じていて、これがはまり役でした。大人になっても小学生とつるんでいる昔の町には一人はいた感じのキャラクターにぴったりでした。

まとめ

宇宙人と小学生のふれあい、という不思議な設定ですが子どもが少し大人に成長する様子が丁寧に描かれている映画です。

個人的な欲を言えば、もっと全体的にファンタジーな描き方でも良かったんじゃないかなと思いました。