出典:IMDb/(C)2018 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & ANNAPURNA FILMS. All Rights Reserved.
「スウィング・キッズ」(2018年韓国製作、2020年2月21日公開)は、日本でもリメイクされた「サニー 永遠の仲間たち」のカン・ヒョンチョル監督による4作目の長編映画です。
本作は音楽とダンスというポップなモチーフながら、監督の強い思いが込められています。
韓国の悲劇の歴史である朝鮮戦争を背景に
映画『スウィング・キッズ』公式サイトより引用
皮肉なことに、最も胸がときめく行為である
“ダンス”というモチーフを通して
戦争とイデオロギーについて語りたいと思いました。
本作が取り上げる社会問題はイデオロギーです。
イデオロギーとは「その人の生き方を決める考え方や主義」のこと。
特に本作の中では政治的観念として取り上げられています。
イデオロギーのせいで分断された人々の、どうしようもない状況に抗議する方法としてタップダンスが登場します。
主人公ロ・ギスに感じる高揚感
映画の中でやんちゃ坊主として登場する主人公ロ・ギス。
出典:IMDb/(C)2018 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & ANNAPURNA FILMS. All Rights Reserved.
一番のやんちゃ坊主でありながら、ちょっと踊ってみればとんでもない才能を感じさせます。
この演出にすごく高揚感を感じます。
ロ・ギス役のD.O.は、普段はK-POPグループEXOのメインボーカルとしても活躍しています。
アーティストとしての華やかさは感じさせつつも、役どころである朝鮮語の方言も学び役に臨んでいます。
5か月の猛特訓による圧巻のタップダンス
クライマックス、一番の見せ場であるタップダンスは圧巻です。
メインキャスト5人によるステージは、ストーリーのクライマックスでもありテンションも最高潮になる最高の映像です。
出典:IMDb/(C)2018 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & ANNAPURNA FILMS. All Rights Reserved.
それもそのはず、より集めの4人にタップダンスを教えていたジャクソン役のジャレッド・グライムスは、現実でも世界的なタップダンサーです。
そして他キャストD.O.、パク・ヘス、オ・ジョンセ、キム・ミノの4人は5か月にもおよぶ練習をして撮影に臨んでいます。
だからこそ映画作品としてだけでなく、ショーとしても成立しています。
人を夢中にさせるタップダンス
圧巻のショーというのはやっている本人も、観ている人も夢中にさせます。
ストーリーの展開も佳境に入ったところでのロ・ギス役のD.O.の吹っ切れたような、いたずらっぽい笑顔がすごく印象的です。
出典:Youtube/(C)2018 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & ANNAPURNA FILMS. All Rights Reserved.
そんなロ・ギスのパフォーマンスには収容所の一番の権力者でもある所長も黙って見守るしかない、という見せ方に監督のメッセージがすごく伝わってきます。
とんでもない展開
タップダンスの最高の高揚感だけで終わってくれないのがカン・ヒョンチョル監督です。
監督は「サニー 永遠の仲間たち」でも、女子高生たちのキラキラした青春をみせながらとんでもない展開にしてくれました。
「スウィング・キッズ」においてもそれは一緒です。
収容所の所長すら黙らせる、ロ・ギスたちによる最高のタップダンスからの現実をみせてくるセンス。
これには監督の「厳しい現実でもそれに立ち向かうキャラクターを描きたい」という思いがあるようです。
「どんなに深刻な状況であっても、それを克服できるキャラクターがいる映画を作りたい」
映画『スウィング・キッズ』公式サイトより引用
自分たちの力ではどうしようもないけれど、タップダンスで最大の意思表示をするロ・ギスの姿にはすごく感動させられます。
ロ・ギスたちが一番輝いた一瞬の思い出のようなエンディングの構成もすごく心に沁みます。
何かひとつでも夢中になれるものがあれば、どんな困難な状況にも負けることがないのかもしれません。
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