「ジョジョ・ラビット」感想|歴史を忘れないことに意味があると思える作品

今回、感想を書いていくのは映画「ジョジョ・ラビット」。

タイカ・ワイティティ監督が第二次世界大戦を子どもの目線で描いた戦争映画「ジョジョ・ラビット」。

史実通りに大戦を描きながら少年ジョジョの成長ドラマとコメディを織り交ぜた作品となっています。

ナチスを敬愛するジョジョはヒトラー青少年団(ヒトラーユーゲント)のキャンプに参加する。そこで不名誉なあだ名ジョジョ・ラビットをつけられてしまう。そんな優しくも弱気なジョジョが自宅の屋根裏にかくまわれたユダヤ人少女と遭遇し、日常が一変してしまう。

主人公のジョジョをローマン・グリフィン・デイヴィス、母親をスカーレット・ヨハンソンが演じています。ジョジョの親友ヨーキー役にアーチー・イェーツが出演。ユダヤ人少女エルサをトーマサイン・マッケンジーが演じ、厳しくも温かくジョジョを見守るクレンツェンドルフ大尉をサム・ロックウェルが演じています。

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タイカ監督の寛容さと愛を広めるあらすじ

タイカ監督の「史実どおりだけど、ヘイトに反対し、寛容さと愛を広める」という意図通りの印象を受けます。ジョジョの成長を描くドラマとコメディがとてもうまく作られています。

史実通りということで基本的には非情なドイツが描かれており、ジョジョにとっても悲惨な、辛すぎる事件も起きます。そういうある意味、人間として成長せざるをえない状況になっていく。この状況を描く脚本が素晴らしいです。

それまでジョジョが信じていたナチスとはどういうことなのか、そしてもう一方ではナチスでないということはどういうことになるのかという両局面の現実を見せられる。その中で少年ジョジョは、世界をどう捉えて、どういう選択をしていくのかという。

第二次世界大戦という過酷な状況のなかでジョジョはどう成長していくのかという映画です。少なくとも僕はそうとらえました。戦争の冷酷さを子どもが知ったとき、どう感じるのか。

もはや職人芸のキャスト陣

そうなってくると周りの人間たちが重要になってきます。少年ジョジョが周りの人たちからどんな影響を受けるのかってことが大事に。

スカーレット・ヨハンソン演じる母ロージーの愛情。サム・ロックウェル演じるクレンツェンドルフ大尉の大人な思いやり。とかをジョジョが理解してるかは置いといて、大きな影響を与えています。

見せしめのように吊るされている人たちをみてなぜそうなったのか聞くジョジョに「できることをやっただけ」と優しく教えるスカーレット・ヨハンソン。乱暴にみえて実は思いやりが深いサム・ロックウェル。

この辺りのキャストと演出がすごくちょうどいいです。サム・ロックウェルは、乱暴な人間にみえて実は人として一番大切なものを持っている人間をやらせたらもはや職人芸だと思います。「スリー・ビルボード」しかり、「プールサイド・デイズ」しかり。

タイカ・ワイティティ監督自身が演じたジョジョのイマジナリーフレンドであるアドルフ・ヒトラーも似ているようで微妙に似ていないメイク。これも10歳の少年の空想の友達であることやヒトラーへの皮肉が込められているようでドラマとコメディをうまく合わせた演出に感じました。

トーマサイン・マッケンジーが演じたユダヤ人少女エルサとの関わり方でジョジョが人としてどう変わっていくかというのがわかります。何を信じるかは自由だけれど、人として何をしたらいけないかということをジョジョが実感できる相手です。このジョジョとエルサ、子ども同士の交流だけど、大人でも痛感する大切なこと。このやり取りはすごく胸にくるやり取りです。

他にも母ロージーから何気なく言われたことを後々ジョジョ自身が口にしていたり、さりげないジョジョの成長の演出も素晴らしいです。


「第二次世界大戦を再び描くことに意味がある」と監督が言っているように、この繰り返してはいけない歴史を忘れないことに意味があると思える作品です。内容はかなりシリアスな場面もありますが、ほどよくコメディタッチで見やすい映画だと思います。

作品ポスター・画像 (C)2019 Twentieth Century Fox