「DUNE/デューン 砂の惑星」の音楽でハンス・ジマーは砂の音を目指した

Hans Zimmer Performs the Dune Soundtrack LIVE | YouTube

「DUNE/デューン 砂の惑星」の音楽を作るためにハンス・ジマーは、1週間ユタ州で砂漠の風の音を聞くことから始めました。

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目指したのは「砂の音」と女性の存在感

ハンス・ジマーは砂の音を目指しました。さらにアトレイデス家やハルコンネン家、皇帝の争いの裏で動く、ベネ・ゲセリットの女性たちの強さを楽曲に取り入れています。

力強い歌声はロワール・コトラー

叫び声のようでどこか心に響く歌声は、アメリカの歌手ロワール・コトラーです。リズム・ヴォーカリストを名乗り音楽療法士としても活動する彼女。アカデミー賞を受賞した本作だけでなく、過去にはアカデミー賞ノミネートの「ラーヤと龍の王国」(2021)にも参加しています。

コトラーはインドのリズム復唱法のコナッコルやスキャット、倍音など様々な歌唱法を取り入れ、伝説的なフレームドラム奏者グレン・ベレズからも影響を受けています。誰も聴いたことのない砂の惑星のサウンドトラックを目指したハンス・ジマーにとって最適なヴォーカルです。

The New York Timesによるとコトラーの歌声は間に合わせのスタジオで収録されました。

These vocals were recorded in a closet in Brooklyn, the makeshift studio of the music therapist and singer Loire Cotler.

(これらのヴォーカルはブルックリンのクローゼットで録音されたもので、音楽セラピストで歌手のロワール・コトラーの間に合わせのスタジオである。)

How Hans Zimmer Conjured the Otherworldly Sounds of ‘Dune’ | The New York Times

この間に合わせのスタジオで彼女は床に座り何時間も歌い続けました。まるで本編に登場する身体全体になにかの文字が描かれ洞窟のような場所で座るレディ・ジェシカの姿を想像してしまいます。

オリジナルの楽器で生み出された砂の音楽

「DUNE/デューン 砂の惑星」の音楽
Image:Warner Bros. Pictures | YouTube

砂の音の創造はコトラーの歌声だけではありません。アーティストたちによるオリジナルの楽器による音色も本作のために生み出されました。本作のサウンドトラックを制作する過程をハンス・ジマーはVanity FairやLos Angeles Timesに答えています。

チャス・スミスはペダル・スティール・ギタリストであり溶接もこなします。スミスはスクラップされた金属くずからまったく新しい楽器を作り出します。本作でもその音は砂漠に吹く風やスパイスの音に使われています。

管楽器奏者のペドロ・エウスターチェは、アルメニアに古くから伝わる管楽器ドゥドゥクを巨大化したようなコントラバスを制作。チェロ奏者のティナ・グオはチベッタン・ホルンの音を模した共鳴フィルターを通したエレクトリック・チェロで参加。スライドギタリストのガスリー・ゴーヴァンは、YouTubeやFacebookからスカウトされました。

ハンス・ジマーの音作り

10代で原作小説を読んだハンス・ジマーは、50年来の夢を実現するためにこれまでのキャリアの延長ではなく、まったく新しい挑戦で本作の楽曲を制作しました。制作過程の雰囲気についてジマーの、自分はバンドメンバーの一人に過ぎなかったというコメントからも本当に良い音楽を作りたいだけだという柔軟な考えが伝わってきます。

参考リンク:
How Hans Zimmer Conjured the Otherworldly Sounds of ‘Dune’ | The New York Times
Watch How Hans Zimmer Created the Score for ‘Dune: Part Two’ | Vanity Fair
Visions, dreams intertwine in Hans Zimmer score for ‘Dune’ | Los Angeles Times
Why Hans Zimmer’s ‘Dune’ Score Made Him Feel Like a Kid Again | Billboard