
映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』でイーサン・ハントは、全人類を脅かすAI「エンティティ」をめぐり、常に究極の選択を迫られる。仲間を救うのか、ミッションを遂行するのか。その一つひとつの選択が、予測不能な結果を招いていく。(関連記事:「『ファイナル・レコニング』本当の敵は誰だ? AIエンティティが人類に突きつける「究極のミッション」とは」)
この哲学的なテーマとは対照的に、クリストファー・マッカリー監督とトム・クルーズは、CGを極力排したリアルなアクションと、世界中の壮大なロケーションでの撮影という「極限」にこだわり抜いた。
ノルウェー:壮大な自然と究極のスタント
ノルウェーの雄大な自然は、本作のストーリー展開に重要なカギを握る象徴的なシーンの舞台となった。ノルウェーは日本にとっても外交関係樹立120周年(2025年)という特別な場所だ。
スヴァールバル諸島
ダンローの妻タピーサとともに犬ぞりで北極圏の大地にずらりと並んだ、ライトアップされた(レーダーと思われる)ドームの間を走っていくグレースのシーンなどが撮影された。
南アフリカ:大渓谷を舞う空中戦
南アフリカではシリーズでスタントを指揮してきたウェイド・イーストウッドの故郷で空中撮影が行われた。壮大な自然の緑と渓谷に赤と黄色のヴィンテージ複葉機(ボーイング・ステアマン)が映える。
全長26㎞の壮大な渓谷、ブライド・リバー・キャニオンでトム・クルーズが複葉機の翼の上で驚異的なスタントが繰り広げられる。中盤ではドラケンスバーグ山脈を背景に2機の飛行機が飛び交い、ガブリエルとの死闘のクライマックスはワイルドコーストがロケ地として登場する。(関連記事:「『ファイナル・レコニング』時速225kmの複葉機スタント」)
イギリス:ロンドンの疾走と大広場の群衆
「トムが走るシーンなしに『ミッション:インポッシブル』はあり得ない」と監督のクリストファー・マッカリーはいう。
ビッグ・ベン & ウェストミンスター橋
ルーサーの危機を察知したイーサンが、ライトアップされたビッグ・ベンを背にウェストミンスター橋を全力疾走するシーンは、まさに「トム走り」の真骨頂。ロンドンの象徴的な夜景の中を駆け抜ける姿は、シリーズファンにとって欠かせない名場面。(関連記事:「『ファイナル・レコニング』ルーサー死亡の衝撃。なぜ彼は死なねばならなかったのか?」)
トラファルガー広場
物語の重要な局面で登場する広場のシーンは、このトラファルガー広場で撮影された。デモが行われる冒頭とすべてが決着し雑踏のなかアイコンタクトをとるイーサン、ベンジー、グレース、パリス、ドガの姿を映すラストとでは全く違った印象を与える。
結論:人間への信頼を選択する物語
このように、世界中の「極限」のロケーションで撮影された本作。その核心にあるのは、AIという不確かな存在に対して「人間を信頼することを選択する」というイーサンの揺るぎない信念。壮大なスケールのアクションと、人間ドラマとしての深みが融合した、まさに『ミッション:インポッシブル』シリーズの集大成と言える作品だ。