「DUNE/デューン砂の惑星」の衣装はデザイナーが作った１万年後の宇宙のファッション

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による映画「DUNE/デューン砂の惑星」（2021）。アメリカの作家フランク・ハーバートによる1965年のSF小説「DUNE」が描く一万年後の世界は、映像化不可能ともいわれてきました。

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DUNEにおける1万年後の宇宙のファッション
衣装から無意識に感じた不穏な空気

DUNEにおける1万年後の宇宙のファッション

ヴィルヌーブ監督による映画化が実現した要因の一つが衣装だったことは間違いありません。その重要な役割を担ったのが衣装デザイナーのジャクリーン・ウェストとボブ・モーガンです。「DUNE/デューン砂の惑星」には「ベンジャミン・バトン　数奇な人生」（2008）、「ソーシャル・ネットワーク」（2010）、「レヴェナント　蘇えりし者」（2015）などで、キャストをその世界に違和感なく登場させるセンスをみせたウェストの力が必要でした。

2000着を超えるこの大規模なプロジェクトを実現させるために、同じような規模のスーパーバイザー経験のあるボブ・モーガンも強力なパートナーとして参加しました。

ヴィルヌーブ監督とウェストにとっての難題は、原作で詳細に文章描写されているスティルスーツのデザインと圧倒的な悪として存在するハルコンネン男爵の衣装でした。

アラキスで必要不可欠なスティルスーツはキャストの助けにもなった

「かかとから始まるポンプシステムにより、汗などの体液を飲み水として再利用でき、砂漠の惑星アラキスで一日活動しても針先ほどの水分しか失わない」と作中では説明されるスティルスーツ。原住民のフレメンにとって必要不可欠なものであり、本作のキャストが着用している姿も本当にそのような機能を持っているようにみえます。

スティルスーツの制作はコンセプトアーティストのキース・クリステンセンのスケッチからはじまり、デザインの実現にはアイアンヘッド・スタジオのホセ・フェルナンデスの協力もありました。フェルナンデスは1989年からはじまったワーナー・ブラザースによる「バットマン」シリーズの衣装に携わり、2016年ベン・アフレック演じるバットマン「バットマン vs スーパーマンジャスティスの誕生」でもデザイナーをつとめました。ベン・アフレック版バットスーツでは頭から首元まですっぽり覆うマスクでありながら、スムーズに振り返る動作を可能とするデザイン、最近ではイーロン・マスク率いるスペースXの宇宙服の原型をデザインしたことで話題となりました。

身長193㎝のジェイソン・モモアにも165㎝のレベッカ・ファーガソンにも似合うように、見た目と機能を両立させるデザインを得意とするフェルナンデスによってスティルスーツは、実際の砂漠で行われた過酷な撮影でもキャストの助けとなったそうです。

中世に求めた1万年後の宇宙のファッション

ヴィルヌーブ監督とウェストのふたりは、衣装の世界観を中世のファッションに求めました。DUNEの世界は1万年後の惑星間という壮大な社会構造でありながら、ポールの父が公爵をつとめるアトレイデス家は皇帝からその地位の没落を狙われるという立場は、ロシア帝国が滅亡し没落したロマノフ家そのものでした。

皇帝の使者とともに現れたスペーシングギルドの衣装も、当時の皇帝にその勢力を警戒されたテンプル騎士団との関係を思わせるような衣装にしたとウェストはいいます。

悪の象徴であるハルコンネン家

ヴィルヌーブ監督にとってスティルスーツと同じく難題だったハルコンネン男爵の衣装。ウェストは映画「地獄の黙示録」（1979）のマーロン・ブランドから男爵のイメージを形作っていったといいます。アトレイデス家を攻めるハルコンネン家の兵士たちは昆虫のような衣装にすることで無機質な悪を感じるものになっています。

ベネ・ゲセリットの教母ガイウス・ヘレネ・モヒアム

作家として活動しながらファッション史に詳しいナタニア・バロンによると、ベネ・ゲセリットの絶対的な存在である教母ガイウス・ヘレネ・モヒアムの衣装は中世ヨーロッパの喪服を思わせるといいます。各領家の陰で暗躍するモヒアムの雰囲気を衣装から感じさせます。ウェストも実際に多くの芸術作品からアイデアを得たといっています。

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