Image: Mission Impossible Writer Explains Why Ethan Hunt’s First Team Had to Die/CBR
トム・クルーズを一躍アクションスターへと印象を変えた「ミッション:インポッシブル」。トム・クルーズだけでなく、他にもジャン・レノなど豪華なキャストが出演しています。しかしそのキャストには原作テレビシリーズ「スパイ大作戦」の出演者は含まれていません。
「ミッション:インポッシブル」1作目キャスト
「ミッション:インポッシブル」シリーズ1作目の主なキャストは以下です。
役名 | 俳優 | 日本語吹替(ソフト版) |
イーサン・ハント | トム・クルーズ | 鈴置洋孝 |
ジム・フェルプス | ジョン・ヴォイト | 山野史人 |
クレア・フェルプス | エマニュエル・ベアール | 紗ゆり |
ジャック・ハーモン | エミリオ・エステベス※1 | 荒川太郎 |
サラ・デイヴィス | クリスティン・スコット・トーマス | 滝沢久美子 |
ハンナ・ウイリアムズ | インゲボルガ・ダクネイト | 榎本智恵子 |
フランツ・クリーガー | ジャン・レノ | 池田勝 |
ルーサー・スティッケル | ヴィング・レイムス | 島香裕 |
マックス | ヴァネッサ・レッドグレイヴ | 翠準子 |
ユージーン・キトリッジ(指令の声) | ヘンリー・ツェニー | 樋浦勉 |
※1 クレジットなし
日本では1995年に公開された「レオン」ですでにブレイクしていたジャン・レノ。いまでは欠かせないキャラクター、ルーサーを演じているヴィング・レイムス。アンジェリーナ・ジョリーの父であり、アカデミー賞受賞作「真夜中のカーボーイ(原題:Midnight Cowboy)」(1969年製作)で主演のジョン・ヴォイト。
とても豪華な顔ぶれですが、実は原作であるテレビシリーズの「スパイ大作戦」のオリジナルキャストは1人も出演していません。その理由を探っていきます。
脚本とキャラクター設定に納得がいかなかった原作キャストたち
Image: Wikipedia, the free encyclopedia
原作キャストが出演しなかったのには主に2つの理由があったようです。
それは
- 名キャラクターを死なせたこと
- 脚本が気に入らなかったこと
です。
「ミッション:インポッシブル」の映画化1作目が公開されたのは1996年。イーサンたちのリーダーとしてテレビシリーズから引き続き登場したジム・フェルプス。彼を演じたピーター・グレイブスのコメントを、当時CNNの特派員だったビル・タッシュ(Bill Tush)は、次のように報告しています。
I felt a little bad that they called him Phelps, and what happens to him happens
‘Mission: Impossible’ TV stars disgruntled/CNN Internationalより引用
フェルプスと呼ばれるのはちょっとかわいそうな気もしたし、彼の身に起こることは起こるんだ
テレビシリーズでは長年チームの優秀なリーダーだったフェルプスが、映画版ではチームを裏切り平気で仲間を殺してしまうことに納得できなかったようです。
テレビシリーズでローラン・ハンドを演じたマーティン・ランドーは、映画全体がテレビシリーズのときとは変わってしまったことを指摘しています。
It was basically an action-adventure movie and not ‘Mission.’
Martin Landau Is ‘Not Interested’ In Appearing In A ‘Mission: Impossible’ Movie/MTVより引用
基本的にアクション・アドベンチャー映画であって、『ミッション』ではなかった。
敵アジトのシステムに入り込み、変装し、潜入するというスパイシーンはテレビシリーズも映画版と変わりありません。しかし敵との派手な戦闘、迫力の爆破シーンなどは映画シリーズから取り入れられた手法といえます。テレビシリーズではいかにバレずに、いかに華麗にミッションを達成するかという点を大事にしていました。テレビシリーズのキャストは、映画シリーズはスパイ映画ではなく、ただの派手なアクション映画だと感じたようです。
長年続いたテレビシリーズだったため映画化を待ち望んだファンも多かったはず。それにも関わらず大幅に世界観が変わってしまえばがっかりされてしまうのは分かっていたはずです。それなのに映画化の際にはなぜそのような流れになってしまったのでしょうか。
トム・クルーズによって実現した映画化
Image: Paramount Movies/YouTube
それは時代の流れと映画化だから、という理由が考えられます。
「スパイ大作戦」の映画化は、トム・クルーズの熱意から始まりました。トム・クルーズは長年キャスティング・エージェントとしてパートナーだったポーラ・ワグナーと制作会社クルーズ/ワグナー・プロダクションズを立ち上げます。その制作会社の最初のプロジェクトとして始まったのが「ミッション:インポッシブル」の映画化です。元々「スパイ大作戦」の大ファンだったトム・クルーズは権利を所有していたパラマウント・ピクチャーズを説得します。
The actor chose Mission: Impossible to be the inaugural project of his new production company and convinced Paramount to put up a $70 million budget.
Wikipedia, the free encyclopediaより引用
トム・クルーズは、自分の新しい制作会社の最初のプロジェクトとして「ミッション:インポッシブル」を選び、パラマウント社を説得して7000万ドルの予算を確保した。
トム・クルーズ初のプロデューサーとしての仕事として起用されたブライアン・デ・パルマ監督は、映画化にあたり次のように考えていたそうです。
According to the director, the goal of the script was to “constantly surprise the audience.”
Wikipedia, the free encyclopediaより引用
監督によると、脚本の狙いは “常に観客を驚かせること “だったそうです。
「スパイ大作戦」が放送されていた1960年代は、「0011ナポレオン・ソロ(原題:The Man from U.N.C.L.E.)」や「宇宙大作戦(原題:Star Trek)」が放送されていました。どれも長年放送された名ドラマです。しかしマンネリ化からは逃れることができず、いつしか放送が終了してしまいます。「スパイ大作戦」もそのマンネリ化の例外ではありません。
そのため大ファンでもあり、プロデューサーでもあるトム・クルーズは、雰囲気は受け継ぎながらも何か大きな変化を必要としていると考えたのではないでしょうか。1作目でテレビシリーズおなじみだったキャラクター、ジム・フェルプスをせめて登場させ、当時のファンへのサービスを残しつつ新たな形を追い求めたのではないかと思います。
大成功した映画シリーズ
テレビシリーズから映画へとなるタイミングで大変革をしたミッション:インポッシブルシリーズ。テレビシリーズのキャストには受け入れられませんでしたが、8作目まで予定されていることを考えたら大成功と言えるのではないでしょうか。