『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』の手紙の意味とは?1996年5月22日に託された大統領の決意

『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』の手紙の意味とは?1996年5月22日に託された大統領の決意
※画像はイメージ

映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』で、エリカ・スローン大統領がイーサンに渡した手紙。そこに書かれた「1996年5月22日」という謎の日付には、シリーズの歴史とキャラクターの覚悟が込められた二重の意味があった。本記事では、その意味を徹底的に考察していく。

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エリカ・スローンの立場と決断の重み

AI「エンティティ」を倒すために必要なソースコードを潜水艦「セヴァストポリ」に取りに行くため、イーサンはアメリカ大統領、エリカ・スローンに空母の使用を求める。各局の長官や将軍は反対するが、スローンはイーサンを信じることにする。(関連記事:「『ファイナル・レコニング』本当の敵は誰だ? AIエンティティが人類に突きつける「究極のミッション」とは」)

6作目『フォールアウト』ではCIA長官として登場したエリカ・スローン。本作『ファイナル・レコニング』ではアメリカ合衆国大統領として登場する。AIエンティティから情報を隠すために、イーサンは鍵を何に使うのか、空母で何をするのかスローンに一切説明することができない。ただ信じてほしいと懇願するだけだ。

彼女の決断が国家の運命を左右する極めて重要な立場だ。

「1996年5月22日」が持つ二重の意味

イーサンがスローンからの手紙を携え、空母のニーリー司令官に渡すシーンは、本作の記憶に残るシーンの一つ。手紙に書かれた「1996年5月22日」という日付。

作中での意味

この日付はスローンとニーリーにとって「上層部がリスクを取ることを恐れたために、大切な何か(おそらくは部下や作戦の成功)を失った、忘れられない日」として描かれている。彼らが現場の意見を無視された過去の苦い経験を象徴している。

メタ的な意味

この日付は、奇しくもシリーズ第1作目『ミッション:インポッシブル』がアメリカで公開された日でもある。これは、監督クリストファー・マッカリーによる、シリーズの原点へのオマージュであり、長年のファンに向けた粋な演出と言える。

過去の無念を晴らすための「信頼」

大統領として命令を下せばなんでも可能となった立場のスローン。イーサンを信じることで当時感じた自分の無念を晴らすという監督の演出は、スローンというキャラクターに与えた葛藤と成長を見事に表現している。

構図の反復

かつてのスローンとニーリーは、情報と信念を持ちながらも、上層部にそれを握りつぶされた。そして今、彼らの前に現れたイーサンは、情報(鍵の使い道やセヴァストポリでの目的)を一切明かせないまま「ただ信じてほしい」と懇願する。これは、かつての自分たちの姿をイーサンに投影せざるを得ない、皮肉な状況だ。

権力者としての選択

スローンは今や、かつて自分たちの意見を退けた「上層部」の立場にいる。他の長官たちが画一的に反対する中、彼女は過去の過ちを繰り返さないことを選択する。イーサンを信じるという決断は、単なる作戦の許可ではない。それは、現場の人間を信じなかったことで失敗した過去(※6作目『フォールアウト』)の自分たちへの贖罪であり、あの日の自分たちの正しさを証明するための行為でもある。

スローンは、イーサンに「もし失敗したら、あなたに全責任がある」と言い放つが、その言葉の裏には、過去のトラウマを乗り越え、今度こそ正しい選択をしてみせるという強い意志が感じられる。

まとめ:原点への回帰と新たな始まり

『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』はシリーズの集大成、あるいは一つの大きな区切りとなるといわれている。その壮大な物語の「区切り『ファイナル・レコニング』」を描くにあたり、シリーズ全体の「始まり(第1作公開日)」である日付を引用することで「原点に立ち返り、そこから最後の戦いへと物語を進めていく」という製作陣の決意表明と捉えることができる。

『ファイナル・レコニング』は2025年5月23日に日米同時公開された。もちろん興行的に金曜日を選んだだけだという理由が最もだとは思うが、1作目の公開日から1日進んでいる。これは『ミッション:インポッシブル』の物語がこれからも進み続けることを意味しているとも考えられるのではないか。