
シリーズ最新作『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』で最大の驚きは、1作目に登場したウィリアム・ダンローの再登場だ。6作と29年の時を経て彼はイーサンの前に戻ってきた。
ダンローはなにもシリーズファンに向けたファンサービスのために戻ってきたのではない。本作のテーマである「選択」と「結果」を象徴するキャラクターとしての役割を担っている。
今作で復帰したウィリアム・ダンローとは
ダンローが登場したのはシリーズ1作目『ミッション:インポッシブル』(1996)。29年前にさかのぼる。
1作目でのイーサンとの因縁
イーサンはチームの裏切り者をおびき出すために、CIAの本部に保管されている海外派遣エージェントのリストNon-Official Cover、通称「NOCリスト」を盗み出した。この絶対に破ることはできないとされた金庫室の技術官としてダンローは登場する。
結局イーサンはデータを盗むことに成功し、IMFはその出来事を隠蔽、そしてダンローは本作でも舞台となるアラスカへと左遷されることとなる。
何も悪いことをしていないダンローは、イーサンのせいでCIA本部から即刻、年間平均気温は3.2℃、ときおりホッキョクグマすら現れるアラスカへと送られたのである。
ダンローを演じたロルフ・サクソン
ダンローを演じるのはアメリカ出身の俳優、ロルフ・サクソン。サクソンはインタビューで今回の復帰について次のようにコメントしている。
Honestly, I thought it was a joke…I said, “You’re kidding.”
出典:‘Mission: Impossible – The Final Reckoning’ Interview: Rolf Saxon | Moviefone 2025年7月13日閲覧
[(今作の出演が決まったとき)正直、冗談だと思ったんです。…(第1作に出演することになった当時)私は「冗談でしょ」と言いました。]
サクソンは1作目でのたった2、3分の出演から、このシリーズにずっと関わることができていることは驚きの連続だと語っている。
『ファイナル・レコニング』でのダンローの役割【敵か味方か?】
ダンローは29年前に左遷されたアラスカの地、セントマシュー島で登場する。イーサンと過去に因縁のあるダンローのいきなりの登場、しかも今回の脅威であるAI「エンティティ」を倒すために必要な情報を求めての出会いだったため緊張が走る。ダンローはベンジーたちに協力してくれるのか。
結果的にダンローは12年前の潜水艦セヴァストポリ沈没時に記録された座標を教えてくれる。そしてAIの暴走の危機をCIAにずっと警告していたこと、沈没時にやってきたCIAのチームリーダー(※おそらく前作『デッドレコニング』に登場した情報局長官デンリンガー)が妻タピーサを侮辱したことを話し、どちらかというと味方である印象を与える。
なぜ今?ダンロー再登場に隠された2つの深い意味
ダンローはファンサービスや、ただベンジーに潜水艦の座標を教えるためだけに登場したのではない。
意味①:物語に「30年の歴史の重み」を与えるため
これはファンサービスに近いかもしれないが、ダンローの登場はシリーズが30年、その物語を積み重ねてきたことを深く印象付ける。
意味②:イーサンの「正義の正しさ」を象徴するための存在
前作『デッドレコニング』と本作『ファイナル・レコニング』では、イーサンがこれまで選択してきた行動による結果がつきまとうことがテーマとして描かれている。妻ジュリアを救うためだったとはいえ、かつて盗み出した「ラビットフット」がAIエンティティの開発へとつながってしまっていたこと。1作目よりも過去に因縁のあるガブリエルが、そのイーサンの正義による選択の負の結果を突き付けてくる存在であること。
しかしダンローはイーサンの選択によりアラスカへと飛ばされてしまったが、結果的に妻タピーサと出会い人生の幸せを手に入れていた。これはイーサンが常に他人のために選択をしてきた結果の善の面を象徴している。
まとめ:シリーズを通したイーサンの選択と結果
ダンローはただのファンサービスで登場したのではない。シリーズを通したイーサンの正義による選択と行動、そしてその結果が常に脅威もありながら良い結果も生んでいたことを表現するキャラクターとして登場している。
イーサンにとってもファンにとっても報われるキャラクターがダンローなのだ。