テネットでアルゴリズムが意味するのは、時間を奪い合う第三次世界大戦です

アルゴリズムが起動すると、人類みんな消えちゃうらしい。そんなことにならないように主人公の名もなき男はニールと頑張ってましたね。

アルゴリズムが意味するのは、時間を奪い合う第三次世界大戦でした。しかも未来人の代理戦争。

※この記事は「TENET テネット」のネタバレを含みます。

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未来人によって作られたTENET

回転ドアをのせたプリヤの砕氷船

Image: Youtube/(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved

映画の後半、TENETは未来人によって作られた組織であることが、プリヤから名もなき男に伝えられました。現代の誰かがセイターに対抗するために作ったと思って観ていたので、驚きです。プリヤによると、アルゴリズムを作った科学者含め未来人たちは、数世代先の時代の人類とのこと。

現代でさえ本当かどうか議論は置いておいて、温暖化など地球環境の悪化が叫ばれていて、未来人たちの環境は確かに今よりもっと悪いだろうなと。その環境に耐えられなくなった未来人たちの派閥が、セイターにアルゴリズムの回収と起動を依頼したわけです。

実際に世界全体の時間が逆行したら、環境が良くなるとかの以前にビッグバンによる宇宙誕生まで戻って何もなくなるんじゃないか、なんてことも思ってしまいますが、それは一旦忘れてとにかくセイター側の未来人たちは時間を逆行させればすべてが解決すると考えているみたい。

未来人からの報酬を受け取るセイター

Image: Youtube/(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved

一方で未来人たちの中にも世界の時間を逆行させるなんてダメだと、アルゴリズムを隠しておきたい派のひとたちもいます。その未来人たちがTENETを作り、まわりまわって名もなき男がアルゴリズムの起動を阻止しようとしています。つまり名もなき男とニール、セイターの戦いは、未来人たちの代理戦争といえます。

アルゴリズムによって引き起こされた、時間を逆行させたい未来人と通常の時間の流れを守りたい未来人との時間を奪い合う第三次世界大戦です。

そもそもアルゴリズムってなに?

タリンでのカーチェイスで奪い合った241、アルゴリズム

Image: Youtube/(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved

ニールによるとアルゴリズムとは「物理的形態を持つ『ある手順』であり、複製も通信も不可能。その仕組みは不明。」とのことです。アルゴリズムを起動すると世界の時間の流れが反転し、地球上のすべての生物は消滅してしまいます。すべての生物というのは、これは推測ですが、アルゴリズムが実行される時点で逆行状態にある生物だけが生き残る、ということだと考えられます。

プリヤによると作った科学者は悪用をおそれ、アルゴリズムを9つのパーツに分割し隠したそう。その隠し場所が核保管庫でした。セイターは未来人と契約し、隠されたアルゴリズムを探し集めていました。タリンでのカーチェイスで名もなき男とセイターが奪い合った241が、最後のひとつでした。

アルゴリズムが起動したらなぜすべての生物が消滅するのか

逆行の世界に初めて足を踏み入れた主人公の名もなき男

Image: Youtube/(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved

アルゴリズムが起動すると地球が陽電子の世界になってしまうからです。名もなき男たちは回転ドアを使って、時間を逆行したり通常に戻ったりしています。劇中に「陽電子は時間をさかのぼる」というセリフがあります。

時間の逆行の仕組みとして、回転ドアを通った物質は陽電子化されていると考えられます。地球上の物質は私たち人間を含め電子をまとった存在です。陽電子をまとった物質はありません。陽電子は宇宙から地球に向けて飛んでくるもので、電子と正反対の物質のため反物質とも呼ばれています。

回転ドアを通り逆行しているとき、自分と直接触れてはいけないというルールがあるのは、陽電子化している自分と電子の自分とが触れると対消滅してしまうからです。アルゴリズムによって地球全体の時間が逆行すると、世界は陽電子の世界になってしまうということではないかと。そのとき逆行していない電子のままの生物は、陽電子とぶつかり合い消滅してしまいます。

現実の科学では国際協力によって建設中の、国際リニアコライダーによって電子と陽電子を衝突させる実験を行う計画が進められています。

ILC では陽電子を大量に作り出して 高エネルギーに加速し、同じく高エネルギーに加速された電子と正面衝突させて実験を行ないます。(途中引用省略)電子と陽電子は対消滅して純粋なエネルギーのかたまりになります。そこからどんな粒子でも作り出せます。また余計な物が出る事なく、極めてクリアな実験が出来るのです。

加速器図鑑 陽電子と陽子/ILC通信 ウェブマガジン より引用

この実験が成功すれば「ビッグバン」から1兆分の1秒後の状態を人為的に再現でき、宇宙誕生の謎に迫れるそう。

宇宙誕生の謎がわかれば、時間を逆行させずともきれいな空気、きれいな環境を人工的に作り出せそうですよね。そんな技術があったら「TENET テネット」では時間ではなく何を奪い合う映画になったのでしょうか。時間を逆行できるなんて、何でもできそうな気がしますが、それしかできないっていうところがミソだと感じます。

TENET テネット(字幕版)
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