今回、感想を書いていくのは映画「ディック・ロングはなぜ死んだのか?」。
事件に巻き込まれた当事者たちのリアルを描いた本作。ダーク・コメディとはいうけれど、いや、これ笑えるのか?そんな作品です。
実際の事件から想像を膨らませて制作されたダーク・コメディです。ビリー・チューさんの脚本を「スイス・アーミー・マン」のダニエル・シャイナートさんが監督しています。
当事者たちのリアルを描くというテーマとして観ると納得できる作品
ダークは付くけどコメディ、ということですが。正直、笑えないっす。コメディ、喜劇って、本人たちにとってはいたって真面目だけれども、第三者からすると笑える、ということだと思うんですけど。
うーん、どうでしょう。この「ディック・ロングはなぜ死んだのか?」は、こういう事件に巻き込まれた人たちの心情がかなりリアルに描かれています。
実際にこんな事件に巻き込まれたら解決できるわけでもなく、正直になれるわけでもなく、こんな感じになってしまうのかな、と。だから本人たちにとってはもちろん悲惨だし、観客にとっても悲劇にしか映らないといいますか。
監督のダニエル・シャイナートさんがムービーウォーカーのインタビューにて、これまでの実際の事件をもとにした映画に「—死んだ人に対するリスペクトを感じない—当事者たちがどういう心情だったのかを描いていく—」と答えています。
当事者たちのリアルを描くというテーマとして観ると納得できる作品です。彼らにとって最悪なことが起きたことはわかるし、観てるこっちが何とも言えない気持ちになりますから。
映画の宣伝文句であるダーク・コメディといわれると、微妙なところです。
早々に死んでしまうディック・ロングはダニエル・シャイナート監督自身
とは言え、キャストの「当事者たちのリアル」という意味での演技は素晴らしいです。
主役ジークを演じたマイケル・アボット・ジュニアさんの、さっさと本当のことを言ってしまった方がましなのに逃げに逃げて状況がどんどん悪くなっていく感じとかすごく伝わってきますし。
序盤から中盤ではそこまで活躍のないジークの奥さんリディア役のヴァージニア・ニューコムさんが真実を知ったときの表情なんかは、それだけでショックが分かりますし。
ジークの娘シンシア役のポピー・カニングハムさんのまだまだ幼いのにジークとの大人びたやり取りはとても自然な演技です。ちなみに序盤で早々に死んでしまうディック・ロングはダニエル・シャイナート監督自身が演じています。
シンプルにサスペンス・ドラマとして観たほうが楽しめるかも
ブラックコメディというジャンルになるみたいですが、いや、笑えない笑えないっていう内容なんですよね。公式サイトの「ディック・ロング、逝く!」って、いや、うまいこと言うてる場合ちゃいますよと。
シンプルにサスペンス・ドラマとして観たほうが楽しめるかもしれません。監督の意図した当事者たちのリアルは伝わってくるのでハマる人にはハマるかもしれません。
そんな感じで見どころはたくさんあるけども、観ている側の頭が追いついていかないといいますか。ブラック・コメディの楽しみ方がまだいまいち分かっていないなと思いました。
いやー、これはどういう映画なんだろう、と思っているうちにニッケルバックの「How You Remind Me」が流れ始めてぜんぶ持ってかれましたけどね。あれ、そういえばジークちょっとニッケルバックのボーカルに似てる気がするなと思って、調べたら全然違いました。