「ミッドサマー」感想|リアルすぎるカルト型テーマパーク

怖いもの見たさで「ミッドサマー」を観た。
すでに観た人の感想は様々。

  • 「エグい」
  • 「グロい」
  • 「観なきゃよかった」

ここまでいわれると逆に興味がわく。

あまりにも気持ち悪ければ途中で観るのをやめればいいかと、観てみた。
※以下、ネタバレを含みます。

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ひとこと感想

観るかどうか迷うほどの前評判とは裏腹に楽しめた。

「カルト型テーマパーク」疑似体験映画という感じ。

グロテスク

「ミッドサマー」のグロは、とんでもなくグロいです。

ただグロすぎて現実感がないところまでいってます。

「ホルガ村ってこういう場所ですよ」ってすごく丁寧に教えてくれてる。

だからこそカルト型テーマパーク、のように感じてしまう。いい意味で。

確かに、

  • 過剰なグロ表現
  • 登場人物の人間性
  • ホルガ村には絶対に近づきたくない

という、賛否が分かれる要素はたっぷり。

グロテスクな表現というものが本当に苦手であれば観るのは厳しいかもしれません。

行き過ぎていて現実感がなく、もはやスイカ割りなどと同等に感じた自分としては問題なしでした。

存在しないカルトをここまで作り上げた映画として間違いなく完成度の高い作品だ。

あらすじ

家族を不慮の事故で失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人と共にスウェーデンの奥地で開かれる”90年に一度の祝祭”を訪れる。美しい花々が咲き乱れ、太陽が沈まないその村は、優しい住人が陽気に歌い踊る楽園のように思えた。しかし、次第に不穏な空気が漂い始め、ダニーの心はかき乱されていく。妄想、トラウマ、不安、恐怖……それは想像を絶する悪夢の始まりだった。

映画『ミッドサマー』公式サイトより

アリ・アスター監督は本作を「カップルの破局を描いた物語」と言っている。

確かに物語としてはそう。ただその舞台がぶっとんでるだけです。

男女の関係に胸糞、という感情を抱いてしまうのならば、「誘いこまれたカルトの村から若者たちは逃れることができるのか」というアドベンチャー映画として観ると楽しめるかもしれない。

マヤ、性の儀式

「ミッドサマー」が騒がれた理由の1つが、クリスチャンとマヤの「性の儀式」。

何かと注目されている「性の儀式」。

映画のテーマが「夏至祭」だけあって、そもそも映画が儀式だらけだ。

公式サイトの解説によると、

「アッテストゥパン」「カルト」「五月祭」「宗教儀式」「人間が生贄」「性的な儀式」「生きた人間を火で燃やす」「スパイラルダンス」「血のワシ」…

公式サイト観た人限定 完全解析ページより

などなど多くの儀式が登場していることが分かる。

マヤとの「性の儀式」は、ダニーとクリスチャンの関係が破綻する決定打でもある。

しかしこの展開まで観ているものとしては「何をそこまでうろたえることがある」と思ってもしまう。

正直ここに至るまでにすでにダニーとクリスチャンの二人の関係は機能不全を起こしていることは誰がみても明らかだった。

ダニーが求めているのは、ストレスをぶつける先と救ってくれるもの、カタルシスを得られる人や場所だった。

その対象として求められたクリスチャンが可哀想でもあった。

ひとつひとつの儀式が、

  • ダニーとクリスチャンを引き離す
  • ダニーをホルガに引き込む
  • クリスチャンはいつのまにか逃れられない

というものだったと感じる。

アリ・アスター監督

監督・脚本を務めたのはアリ・アスターさん。

長編映画デビュー作でもある前作「ヘレディタリー 継承」は現代ホラーの頂点と言われている。

2018年の長編初監督作品『ヘレディタリー/継承』がサンダンス映画祭で上映されると、批評家から絶賛され、世界中の映画誌、映画サイトのベスト作品に選出…。

映画『ミッドサマー』公式サイトより

「ミッドサマー」は映画としての完成度がめちゃくちゃ高い。観ていて最後まで違和感がない。

  • 映像
  • 衣装や小道具
  • ストーリー展開

アリ・アスター監督の最新作は今後間違いなくチェックしていく。(なんか上からですみません。)

でもそういう監督、作品との出会いは映画を観ていて一番うれしい出会いだったりする。

インタビュー記事のアリ・アスター監督の写真をみると「こんな作品作っておきながらなんなんだその笑顔は」と思うので、ぜひみなさんも検索してみてほしい。

ヘレディタリー/継承

前作「ヘレディタリー 継承」と今作「ミッドサマー」から分かることは、

  • アリ・アスター監督は抱えている問題を作品としてアウトプットすることがうまい

ということだ。よくラジオを聴くオードリーの若林さんに共通するものを感じる。

2つの作品で描かれている問題は、

  • 「ヘレディタリー 継承」では家族
  • 「ミッドサマー」では恋人

「家族」や「恋人」など、身近にあって簡単には離れられないものへ感じる問題。

社会に対して抱いている気持ちを作品として世界中の人に響く形でアウトプットできる。
そういう印象を受ける監督です。

キャスト

ダニ―(主人公)・・・フローレンス・ピュー
クリスチャン(ダニーの恋人)・・・ジャック・レイナー
マーク(おバカ担当)・・・ウィル・ポールター
ジョシュ(賢い担当)・・・ウィリアム・ジャクソン・ハーパー
ペレ(ホルガ村出身)・・・ヴィルヘルム・ブロングレン
サイモン(ホルガ村に巻き込まれる部外者)・・・アーチ・マデクウィ
コニー(サイモンの恋人)・・・エローラ・トルキア
ダン(ホルガ村の老人)・・・ビョルン・アンドレセン

映画『ミッドサマー』公式サイトより

それぞれのキャストが見た目もキャラクターの人となりに合っています。

カップル

「ミッドサマー」はカップルで観ると別れるともいわれている何とも迷惑な映画です。

仮に「ミッドサマー」を観てカップルが別れる理由としてあげられるのは、

  • 一方が相手に「こんな映画見せやがって!」と怒る
  • 元々別れる予定のカップルの最後のデート
  • ダニーとクリスチャン

映画を観て別れるくらいなら、それこそダニーとクリスチャンのように機能不全な関係だ。

映画を観て「あーだこーだと話せる」そんな関係かどうか再確認できる作品だと思う。

ダニー

ダニーは家族を失い精神が不安定。彼氏のクリスチャンにも依存気味だ。

ダニーをみていると「面倒くさい」と思う。

家族を失った人物ではあるけれど。

  • クリスチャンが行くパーティに自分も行くと言い
  • クリスチャンが大学友だちと行く旅行に自分も行くと言い

「いや、行くなや!」

  • 結末、ラストシーンでのあの選択

「いや、なんでだよ!」

序盤から最後までダニーには同情よりも「一人になる時間も必要だよ?」と思ってしまう。

クリスチャン

クリスチャンはダニーが抱える家族の問題に限界を感じている。

優柔不断なところはあるが何とかダニーに寄り添おうとしていていい奴にも見える。

「ミッドサマー」を観ていてクリスチャンは、唯一ホルガ村から逃げられるキャラクターかもしれないと思った。

ダニーに感情移入していると、クリスチャンはただのくず男だ。

しかし「ホルガ村のヤバさに気がついた人間」として観ると、すべての行動がホルガ村から逃れるための行動に見えてくる。

そうなるともう「クリスチャンがんばれ、ホルガに負けるな、ダニーに負けるな」という気持ちになる。

ペレ

ペレは最後まで謎が多い。

ホルガ村での役割ははっきりとしているが、本当のところダニーのことやホルガ村の風習、文化をどう思っているかはわからない。

ただ、公式の解析サイトでは、

アメリカ人の生贄となる彼らを故郷ホルガに招き入れた諸悪の根源

公式サイト観た人限定 完全解析ページより

とされているので、そういうことなのだろう。

ただ映画を観ているうえでは、ペレに対しては「ムカつく」「怖っ」「悪い奴」などの負の感情は起きなかった。

これもアリ・アスター監督のうまさかもしれない。

ホルガ村という悲惨な舞台だけれども。
あくまでダニーとクリスチャン、二人の関係の機能不全がテーマだよ、というアリ・アスター監督の思惑通りだ。

マーク、ジョシュ、サイモン、コニー

ホルガ村で騒ぐとこうなるよ、というためだけに登場するのがサイモンとコニーだ。

そしてダニーとクリスチャンの友人、マーク、ジョシュも同様にいい感じにホルガ村の恐ろしさを観客に教えてくれる。

ビョルン・アンドレセン

ビョルン・アンドレセンは、ダニーたちにホルガ村とはどういう村なのか突きつける最初の老人・ダンを演じている。

出演時間の短さに対して観客に与えるインパクトの大きさはMaxです。

ミッドサマーの意味

直訳:夏至

夏至祭

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より

気になるのは直訳以上の意味が込められているのかどうかだが。

元々アリ・アスター監督は、

「アメリカ人が夏至祭の間にスウェーデンの特別なコミューンを訪れる物語をつくってほしい」という依頼から書いた

【GINZA】インタビューより

とのことなのでタイトルの意味はその通りなのだろう。

しかしアリ・アスター監督のことなのでもっと色んな意味も込めているかもしれない。

というよりやっぱりタイトル通りこの映画は「夏至祭(ミッドサマー)」を観る、ある意味ドキュメンタリー作品なのかもしれない。

結末、ラストシーンでのダニー、クリスチャン

「ミッドサマー」の結末の感想は、

  • 爽快派
  • 胸糞派

の二手に分かれている。

恐らくダニーとクリスチャン、どちらに感情移入してこの映画を観たかで分かれている。

  • 主人公ダニー派は爽快
  • クリスチャン派は胸糞

ちなみに自分は胸糞というか、ダニーに対して「なに笑ってんだよ!」と思ってしまったのでクリスチャンに感情移入していたと思われる。

結局、

  • ダニーはホルガ村から逃れられず
  • クリスチャンはホルガ村にとりつかれたダニーから逃れることができなかった

という物語だと感じた。

ヒグチユウコ、ポスターとパンフレット

各劇場で売り切れが続出したパンフレットもいまではファントムフィルム公式オンラインサイトにて購入できる。

『ミッドサマー』パンフレット¥ 900

  • 本編に登場した聖書ルビ・ラダーを思わせる装飾
  • 巻末に、絵:ヒグチユウコ デザイン:大島依提亜のアートポスター2種縮小版

本編に加えてグッズにも気合が入っている。

こういう作りこみは大好きだ。

製作側が世界観を全体で作ろうとしている。

そんなところも含めて作品からテーマパークっぽさを感じるのかもしれません。

配信サービス

そんな「ミッドサマー」は、購入、レンタル、配信など劇場以外でもすでに観ることができる。

ちなみに、

ミッドサマー/配信サービス
Huluストア
¥550

です。

評価

「ミッドサマー」の評価は、

  • Filmarks 3.6/5
  • 映画.com 3.3/5
  • Yahoo!映画 3.2/5

となっている。

騒がれた作品としてはそこまで評価は高くない。

賛否が分かれた評価となっている。

ただ興味があるならぜひみてほしい作品ではあります。