まずリブート版「ゴーストバスターズ」(2016)は、それまでの過去作とは独立した作品と考えた方がよさそうです。
それでも製作には、過去作を監督したアイヴァン・ライトマン、脚本を書いたダン・エイクロイドが参加しています。なのでまったく別の派生した作品というわけではありません。
メインキャストが全員女性になり、シリーズのファンからは批判を受けたものの、興行収入は全世界で2億ドルを超え、結果的には成功を収めています。
ゴーストバスターズはなぜ女性版キャストでリブートされたのか
過去2作品がビル・マーレイなど男性キャストだったのが、本作ではメリッサ・マッカーシーをはじめとし、全員女性キャストとなっています。これには製作が決まった流れと監督を務めたポール・フェイグの持ち味が関係していると考えられます。
- 製作が決まった流れ
- 監督の過去作
- 監督の考え方
この3つで、なぜ本作ではメインキャストが全員女性なのか考察していきます。
ポール・フェイグ監督の製作に決まった流れ
本作はもともと、過去作を作ってきたアイヴァン・ライトマンが継続して製作する予定だったので、そこから考えなければいけません。
「ゴーストバスターズ2」からの続編製作の話は2008年から出ていました。しかし脚本やキャストの兼ね合いで何度も延期を重ねています。そしてハロルド・ライミスの死去により、アイヴァン・ライトマンは監督を辞退し、完全にポール・フェイグ監督によるリブート版「ゴーストバスターズ」に移行しました。
このような経緯から過去作とは少し違ったキャスティングになったのは、仕方ないことかもしれません。
ポール・フェイグ監督の過去作
ポール・フェイグ監督の過去作をみると、2つのことがわかります。
- コメディ作品を得意とする
- 女性コメディアンとの作品が多い
それぞれみていきます。
コメディ作品を得意とする
つまらないとの評価も多く耳にする本作ですが、ポール・フェイグ監督に実力がまったくないわけではありません。むしろコメディにおいて、ありあまる才能を持っている監督です。
Image: Netflix / YouTube
フェイグが脚本を執筆した学園コメディドラマ「フリークス学園」は、カルト的な人気を誇ったらしく。
さらに監督兼製作総指揮を務めたコメディ映画「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」では、受賞には至らなかったものの、第84回アカデミー賞で脚本賞(アニー・マモロ、クリステン・ウィグ)と助演女優賞(メリッサ・マッカーシー)にノミネートされています。
確かな実力があり、ポール・フェイグ監督とコメディは切っても切れない関係といえます。
女性コメディアンとの作品が多い
ポール・フェイグ監督は、これまでの作品をみても、女性コメディアンとのコメディ製作が得意であるように感じます。
「ブライズメイズ」でもクリステン・ウィグ、メリッサ・マッカーシーと共同作業をしており。本作のキャスティングについてポール・フェイグは、シネマトゥデイに対して次のように答えています。
オリジナルは当時、最も“笑える”といわれる俳優たちを使って面白いものになった。それで、僕も最も笑える俳優を選んだら女性になったんだ。
ゴーストバスターズ女性に変更のなぜ 監督が明かす大抜擢の裏側 / シネマトゥデイ より引用
メインキャストを務めたクリステン・ウィグ、メリッサ・マッカーシー、ケイト・マッキノン、レスリー・ジョーンズのコメディアンとしての実力も、サタデー・ナイト・ライブの出演者というお墨付きです。
リブート版「ゴーストバスターズ」をただただ面白い作品にしようとした結果、女性版キャストになったようです。
ポール・フェイグ監督の考え方
本作のメインキャストが、なぜ女性になったのか、上記まででも十分ですが、ポール・フェイグ監督の考え方も知るとさらに納得できます。
ポール・フェイグ監督は2018年に、今後製作するすべての作品においてインクルージョン・ライダーを採用することをTwitterで発表しました。
Thrilled to announce that Feigco Entertainment is officially adopting an #inclusionrider for all our film and TV productions moving forward. Thank you to @Inclusionists and Stacy L. Smith for their guidance and inspiration. We challenge other companies and studios to do the same.
— Paul Feig (@paulfeig) March 13, 2018
インクルージョン・ライダーとは映画やドラマの制作現場において、俳優が出演契約のなかで、キャストとスタッフの多様性を確保するよう求めることができる条項です。南カリフォルニア大学コミュニケーション学部教授のステイシー・スミスとワシントンD.C.の弁護士のカルパナ・コタガルによって提唱されました。
インクルージョン・ライダーにより世界の状況をより作品に正しく反映でき、よりよい映画作りにつながると考えられています。
ポール・フェイグ監督は、この最先端ともいえる考え方を、マット・デイモンに並んでいち早く採用しました。ポール・フェイグ監督の、ただただ良い作品を作りたいという思いが伝わってきます。
まとめ
興行収入的には成功しながらも、なぜメインキャストが全員女性なのかと批判も受けたリブート版「ゴーストバスターズ」。
2008年から話はありつつも、ようやく2016年に実現するという紆余曲折がありながら、完全なリメイクとして蘇らせたポール・フェイグ監督の実力はたしかなものです。
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