1回目は神秘的なSFとして、2回目は壮大なヒューマンドラマとして楽しめる『メッセージ』。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督により映画化されたテッド・チャンの小説「あなたの人生の物語」原作のSF映画です。
今回は、『メッセージ』をストーリーの観点から解説してみます。
全部すべて、まるっとお見通しのルイーズ
『メッセージ』はSF映画でありながら、言語学者ルイーズの物語です。超巨大飛行物体や宇宙人、謎の言語などいろんなSF要素が登場します。
その中でも実は、徹底してルイーズに焦点をあてたストーリーになっています。なのでSFとしても楽しめて、ヒューマンドラマとしても共感できる映画です。
ルイーズに起きた変化を詳しく解説していきます。
ヘプタポッドはなんだったのか
ヘプタポッドがしたことは、ルイーズに彼らの言葉を教えただけです。彼らは、ルイーズたちと同じ時間軸にどこかで生きている生物だと思います。それは地球かもしれないし、宇宙のどこかです。
時間の概念が人間とは異なる彼らは未来がみえます。3000年後彼らに必要なことをしただけでした。それが人類、ルイーズに彼らの言葉「ユニバーサル言語」を教えることです。目的を果たした彼らは去っていきました。
ヘプタポッドはルイーズにとってただのきっかけです。彼らが実際なんだったのかというのは『メッセージ』において重要ではありません。ただし未知の生命体であるヘプタポッドの言葉を丁寧に解析していく様子はSF映画としてとてもワクワクさせられました。
ルイーズに起こるフラッシュバック
ヘプタポッドたちと交流する前からルイーズには未来の娘のフラッシュバックが起きていました。それはなぜか?もうすでにルイーズはヘプタポッドたちの言葉を理解する未来に向かっていたからです。
『メッセージ』のクライマックス、ルイーズは意識して未来の情報にアクセスします。これはヘプタポッドたちの言葉を理解したからです。
理解する前から未来がみえる自分に向かっているため、ルイーズはまるで過去の記憶のように未来の映像が無意識にフラッシュバックしています。
このルイーズの記憶がフラッシュバックするシーンが1回目みたときは混乱します。フラッシュバックが未来のものであることが分かり、徐々に意味がつながっていくのは本当に面白いです。
まとめ
『メッセージ』の切なくも面白いところは、ルイーズだけの人生の意味が大きく変わったことです。ルイーズだけがヘプタポッドたちの言葉を理解し、未来がみえるようになりました。その未来では、ルイーズの娘は若くして死んでいます。
その辛い未来も実際に起きなければ娘との幸せな時間もない、という切ない未来に向かうルイーズというのが映画のエンディングで音楽とともに深く心にしみます。