『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』なぜパリスはガブリエルを裏切ったのか?俳優が語る「心の奥底で探していたもの」の正体

『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』なぜパリスはガブリエルを裏切ったのか
※画像はイメージ

『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(2023)で、主役のイーサン・ハントを凌ぐほどの強烈なインパクトを残し『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』にも登場したキャラクター、パリス。(関連記事:「『デッドレコニング PART ONE』のパリスがかっこいい!正体から結末まで、彼女のすべてがわかる」)

白塗りのメイクに猛獣のような戦闘スタイル。ガブリエルの忠実な“道具”として、私たち観客を何度も絶望の淵に突き落とした。

しかし、多くの人が心を掴まれ、同時に大きな謎を抱いたのではないだろうか。

「あれほどガブリエルに尽くしていた彼女が、なぜ最後にはイーサンを助けたのか?」

その行動の裏には、単なる「復讐」だけでは説明できない、もっと根源的な心の渇望が隠されていた。

この記事では、パリスを演じた俳優ポム・クレメンティエフ本人の言葉を手がかりに、彼女がガブリエルの元にいた本当の理由、そして彼女の心を動かした「決定的な瞬間」の謎に迫る。

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支配か、信頼か?パリスがガブリエルの“野獣”であり続けた理由

そもそも、なぜパリスはあのガブリエルの元で、あれほど忠実に暗殺を繰り返していたのか?

その答えは、彼女が持つ「特異性」にあると考察できる。常軌を逸した戦闘能力、感情を押し殺したかのような無表情。彼女は、社会にうまく適合できない、あるいは社会から疎外されてきた過去を持つのかもしれない。

そんな彼女の凶暴なまでの力を唯一「評価」し、その能力を解放する場所を与えてくれたのがガブリエルだったのではないだろうか。

ガブリエルは彼女を支配していたが、同時に「好きなようにやれ」と、その破壊衝動に一切の制限をしなかった。それはパリスにとって、歪んでいたとしても、自分という存在が初めて承認される唯一の“居場所”。彼の命令を遂行することだけが、自らの存在価値を証明する手段だった。

この時点での彼女はまだ、「本物の絆」や「仲間から気遣われる温かさ」を知らなかった。知っていたのは、力を認められ、意のままに振る舞えるという、刹那的な満足感だけだった。

心変わりの決定的動機:「気遣われていなかった…」列車の一刺しが暴いた“偽りの絆”

轟音を立てて疾走する列車の中、物語は決定的な転換点を迎える。

イーサンとの死闘の末、命までは奪われなかった。それは、彼女がこれまでの人生で経験したことのない、純粋な「気遣い」だった。

信頼していたはずの主人ガブリエルは、躊躇うことなく彼女の腹部にナイフを突き立てた。

「利用価値がなくなれば、即座に切り捨てられる」

イーサンの行動とのあまりにも鮮やかな対比によって、パリスは悟る。自分が信じていたガブリエルとの“信頼”は、単なる“利害”でしかない、偽りの絆だったのだと。

物理的なダメージ以上に、信じていたものに裏切られた心の傷は計り知れない。しかし、その痛みと絶望こそが、偽りの絆を断ち切り、彼女の瞳に新たな光を灯すきっかけとなった。

俳優が語る真意「心の奥底で、彼女が探し求めていたもの」

では、絶望の淵に立たされたパリスが最後に見出した希望とは、一体何だったのか。

その核心に迫るヒントを、パリスを演じた女優ポム・クレメンティエフ自身が、インタビューで語っている。パリスの変化を次のように表現した。

もしかしたら心の奥底では、それが彼女が探し求めていたものなのかもしれない
(maybe deep down, it’s what she was looking for)

出典:How Ethan’s Actions Impact The Rest Of The Mission: Impossible — The Final Reckoning Cast Explained: “There’s A Symbiosis Between All The Characters” 2025年7月26日閲覧

解説:コメントから読み解くパリスの3つの心理

クレメンティエフの言葉と作中の描写から、パリスの心の中では、単なる復讐心だけではない、より複雑な感情が渦巻いていたことがわかる。

  • 心理①:偽りの絆への気づき:ガブリエルに頼られることで感じていた承認欲求が、彼に刺されたことで「自分は大切にされていなかった」という絶望に変わった。
  • 心理②:本物の絆への渇望:イーサンや彼のチームが見せた、互いを気遣い守り合う姿。それこそが、彼女が心の奥底で探し求めていた「本物の絆」だった。
  • 心理③:「人間性」の芽生え:最後の行動は、自分を道具として扱った者への復讐以上に、初めて自分を人間として扱ってくれた者たちを守るための、主体的な「選択」だった。

まとめ:パリスの心変わりの本当の理由

パリスの心変わりは、単なる裏切りや気まぐれではなかった。それは、偽りの居場所からの脱却であり、人間らしい温かい「絆」を求める魂の叫びだったのだ。

殺すことしか知らなかったパリスがダンローのナイフでベンジーを救い、『ファイナル・レコニング』の最後にトラファルガー広場でみせた姿は、『ミッション:インポッシブル』にまた新たな絆が生まれたと感じさせた。