
『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』には驚くほど多くのキャラクターが登場する。それでも一人ひとりのキャラクターを際立たせることに成功していて、女殺し屋のパリスもその一人だ。
イーサンの宿敵ガブリエルの忠実な部下であり、恐ろしいほどの行動力で感情をあらわにしながら迫ってくる姿はまるで野獣のよう。そんなパリスは間違いなく『デッドレコニング』で新たに誕生したスターキャラのひとりだ。
この記事では、演じたポム・クレメンティエフ本人のインタビューも交えながら、パリスの謎を徹底的に解き明かします。
- パリスとは一体何者なのか?
- PART ONEの最後、彼女は生きているのか?
- 続編『ファイナル・レコニング』での再登場は?
※この記事は、映画『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』の重大なネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。
(関連記事「『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』のサブタイトルが意味することとは」)
そもそも「パリス」とは何者?謎多き暗殺者の正体

パリスは多くの謎のまま登場する。出自も経歴も不明だが、イーサンの因縁の敵であるガブリエルに忠実に使える冷酷な殺し屋であることは間違いない。
ガブリエルに仕える冷酷な殺し屋
パリスは、本作の黒幕であるガブリエルの右腕として行動する、極めて有能で冷酷な暗殺者だ。彼女の役割は、”エンティティ”が下した指示を物理的に実行する「手足」となること。ガブリエルへの忠誠心は絶対的で、彼のためならどんな非情な任務もためらいなく遂行する。
その執拗な追跡能力は凄まじく、一度狙った獲物は地の果てまで追い詰める、まさに「追跡する死」そのものと言える。
台詞がほぼ無いキャラクター設定
パリスを最も特徴づけているのが、劇中でほとんど言葉を発しないという点。彼女が発するのは、嘲笑うような含み笑いや、苦痛に満ちた息遣いのみ。
この無口な設定は、彼女の不気味さと人間離れした存在感を際立たせている。言葉ではなく、行動と暴力性だけで自らの感情と目的を表現する姿は、予測不能な恐怖を観客に与えた。それはまるで、言葉を必要としないエンティティの思想を体現しているかのようでもある。
演じたクレメンティエフはパリスというキャラクターを次のようにとらえている。
What is fun about this character too is that it can be very quiet and [then] very violent in one split second. I think what I was looking for is to bring something very unexpected, you don’t know how she’s going to react,
出典:How ‘Mission: Impossible’ Fan Pom Klementieff Became ‘Insane’ Baddie 2025年6月14日閲覧
[このキャラクターの面白いところは、とても静かなのに、一瞬でとても暴力的になるところですね。私が求めていたのは、予想外の展開、つまり彼女がどう反応するかわからない、という演出です。]
特徴的なピエロメイクと戦闘スタイル
涙のように頬を伝う黒いラインが入ったピエロのようなメイクも、パリスを象徴するアイコンとなっている。クレメンティエフはこのメイクが自身のアイデアだったことをGlobal Grindに明かしている。
It was my idea, it was inspired by Pierrot Lunaire, which is a character from the commedia dell’arte
出典:Pom Klementieff Explains Origins Of Her Mission Impossible Look 2025年6月14日閲覧
[これは私のアイデアで、コンメディア・デラルテの登場人物である『月に憑かれたピエロ』からインスピレーションを得たものです]
コンメディア・デラルテとは16世紀から18世紀にヨーロッパで流行した、仮面を使用するイタリアの即興演劇のひとつの形。そんなピエロから影響を受けたメイクにより、クレメンティエフはミステリアスな要素をパリスに追加した。また夜のヴェネツィアでの撮影で顔に光がよく当たるようにという実用的な面も考えられている。
パリスを演じた俳優「ポム・クレメンティエフ」の驚くべきギャップ

あの強烈なパリスを演じたポム・クレメンティエフとは、いったい誰なのか?その俳優の素顔を探求していく。
ポム・クレメンティエフのプロフィールと経歴
パリス役を演じたポム・クレメンティエフ(Pom Klementieff)は、フランス出身の俳優。韓国人の母親とフランス系ロシア人の父親を両親にもち、その多国籍な背景が独特の魅力を醸し出している。
スパイク・リー監督のハリウッド版『オールド・ボーイ』(2013)で注目を集め、その後、世界的な大ヒット作で重要な役を演じることになる。
代表作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のマンティス役
クレメンティエフを世界的に有名にしたのが、2017年に公開された『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』で初登場のマンティス役。
相手の心に共感し、触れるだけで感情を読み取ることができる心優しいマンティスは、純粋でどこか天然なキャラクターとして絶大な人気を博した。
そのマンティスと、冷酷非情な暗殺者パリス。この180度異なるキャラクターを見事に演じ分ける演技の振り幅に、世界中の映画ファンが衝撃を受け「あのマンティス役の女優だったのか!」という驚きの声が数多く上がった。
役作りの裏側
『ミッション:インポッシブル』シリーズのアクションが、他とは一線を画す理由をクレメンティエフはトムとマッカリー監督の二人から実感している。
Both Christopher McQuarrie and Tom have such love for moviemaking, and movies from all around the world. They know everything.
出典:Pom Klementieff & Vanessa Kirby On Unique Characters In Mission: Impossible – Dead Reckoning 2025年6月14日閲覧2025/06/14
[クリストファー・マッカリーもトムも、映画製作、そして世界中の映画への深い愛情を持っています。彼らは何でも知っています。]
マーベル映画に出演しているころから、トレーニングがライフスタイルになっているというクレメンティエフだが、本作に出演することでさらなるステップアップをしている。ひとつのシーンについてとことん話し合うトムとマッカリーのスタイルは、クレメンティエフも影響を受け、より自由にアクションに取り組めたという。オリエント急行で車掌から鍵を奪うシーンの「ガラス窓」にハートを描くシーンが印象的だが、これはクレメンティエフがその場で思いついた演出。
なぜ人々はパリスに魅了されるのか?【3つの魅力】

パリスは敵役でありながら、多くの観客を魅了した。その求心力の源泉はどこにあるのだろうか。3つの魅力から解き明かしていく。
魅力① 圧倒的な存在感と表情の演技
前述の通り、パリスには台詞がほとんどない。だからこそ光るのが、ポム・クレメンティエフの卓越した表情の演技。
獲物を見つけた時の狂喜の笑み、イーサンに不意を突かれた時の驚き、そして最後に命を救われた時の戸惑い――。彼女は目線と微細な表情筋の動きだけで、言葉以上に雄弁にパリスの感情を表現した。スクリーンに映るだけで空気を変える、その存在感は今作随一。
魅力② シリーズ屈指の残虐で美しいアクション
パリスが繰り広げるアクションは、シリーズ全体を通しても屈指のインパクトを誇る。特にヴェネツィアの袋小路で、イーサンを相手にするシーンは圧巻の一言。狭い空間を縦横無尽に駆け巡り、鉄パイプを振り回す姿は、美しくも恐ろしいものだった。
ただ強いだけでなく、キャラクターの狂気やサディスティックな性質がアクションの隅々にまで反映されており、観る者に強烈な印象を焼き付けた。
魅力③ 最後にみせた”人間性”
冷酷な殺人マシンかと思われたパリスが、物語の終盤で見せた人間性のひとかけら。これこそが、彼女のキャラクターを忘れられないものにした最大の要因だ。
イーサンに命を救われたことで、彼女の中に明らかな動揺と変化が生まれる。そして最後の力を振り絞り、イーサンに未来を託すように情報を与えるシーンは、彼女が単なる悪役ではないことを証明した。このキャラクター変化の深みが、私たちを惹きつけてやまない。(関連記事「【ネタバレ徹底解説】ミッション:インポッシブル/デッドレコニングの結末を考察!『ファイナル・レコニング』への伏線も解説」)
続編『ファイナル・レコニング』での役割を大予想!仲間になる?それとも…
PART ONEで強烈なインパクトを残し、生死不明のまま退場したパリス。続編での彼女の役割について、ファンの間では様々な予想が飛び交った。ここでは、当時最も有力だった説を振り返っていく。
予想①【最有力】イーサン側の協力者になる
最も多くのファンが期待したのが、イーサン側の協力者になるという展開。命を救われた恩義、そして自分を駒としか見なさなかったガブリエルへの復讐心から、イーサンと手を組むという説だ。
イルサ・ファウストという大きな存在を失った今、パリスが新たな戦闘要員としてIMFチームに加われば、これ以上ないほど心強い存在になったはず。
予想② 第三勢力として暗躍する
もう一つの有力な説が、誰の味方でもなく、自身の目的のためだけに行動する「第三勢力」になるというもの。イーサンにもガブリエルにも与せず、物語をかき乱すジョーカーのような存在になる可能性も考えられた。この予測不能な動きが、物語に更なるスリルをもたらしたかもしれない。
台詞なしでキャラクターを確立したパリス
『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』において、パリスは単なる「強敵」の一人ではなかった。彼女は、台詞なしでキャラクターを確立し、圧巻のアクションで観客を魅了し、そして最後には物語の根幹を揺るがす人間性を見せた、本作におけるもう一人の主人公だったと言っても過言ではない。
人間性を取り戻した(かもしれない)彼女が、続編でどのような活躍を見せてくれるのか見どころとなる。
もう一度パリスの活躍を観たくなった方は、ぜひ配信サービスで『デッドレコニング PART ONE』を見返してみてほしい。彼女の細かな表情の変化に注目すると、新たな発見があるはずだ。