Image:Mission Impossible/YouTube
2011年公開の『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』を彩ったのはイーサン・ハントのアクションだけではない。(関連記事:「映画『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』のあらすじと見どころ|アニメーターでもある監督の演出力」)
砂嵐の中を走るコンバーチブル、疾走するボディライン――もうひとつの主役、それがBMWの車たち。
本作では、未来的なコンセプトカーから実用性と美しさを兼ね備えた高級モデルまで、BMWの多彩なラインナップが劇中に登場。
なぜBMWなのか?──映画の“もう一人のキャスト”
『ゴースト・プロトコル』では、BMWが公式な自動車パートナーとして名を連ねている。ただのスポンサーではなく、BMWはこの作品のために、世界各地で撮影されたシーンに車両を提供し同行。まるでもう一人のキャストとして物語に深く関わっている。
BMW Vision EfficientDynamics ── 未来を走るコンセプトカー
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物語のクライマックス近く、インド・ムンバイの喧騒を突き抜けるシーンで登場したのが、BMW Vision EfficientDynamics。
この車は、のちにBMW i8として市販されることになるコンセプトモデルで、映画ではその流線型デザインとハイブリッド技術が際立って描かれる。
このシーンではイーサン・ハントを演じるトム・クルーズが驚異的な運転技術を見せつける。助手席に乗っていたポーラ・パットンはVanity Fairのインタビューで
I mean, this man can drive a car! There were moments when we’d have to stop within, literally, a foot of the camera, and he’d be going at it full speed…
Mission: Impossible–Ghost Protocol’s Paula Patton has Done Many Things in a Car to Make a Man Happy | Vanity Fairより引用
[つまり、トム・クルーズは車の運転が上手いんです!カメラから文字通り30センチくらいのところで止まらなきゃいけない場面もあったのに、全速力で走って…]
と絶賛している。
BMW自身もこのモデルを「現在の電動スーパーカーの中で、最も洗練された技術と最も印象的なデザインを持つ」と表現。映画を通してこの車の存在感を世界に印象付ける狙いがあった。
BMW 6シリーズ カブリオレ ── ドバイの砂漠を突き抜ける疾走感
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ドバイでのハイウェイチェイスでは、BMW 6シリーズ コンバーチブル(F12)が活躍している。オープンエアでの走行がもたらす臨場感と、アクションとの親和性は抜群。
映画とともに魅せた「現実のテクノロジー」
BMWにとってこの映画は、単なる映像出演ではありません。ロサンゼルスオートショー(2011年)では、劇中登場のi8コンセプトやi3電気自動車を展示。ポーラ・パットンが登壇するなど、映画と製品を連動させた大規模キャンペーンが展開された。
このようにBMWは『ゴースト・プロトコル』をブランディングの最前線として活用した。
映画の裏話:ドレスから戦闘服への一瞬の変身
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さらに注目すべきは、ムンバイでのカーアクション中に描かれた着替えのシーン。ポーラ・パットンが、緑のイブニングドレスから戦闘服へと車内で素早く着替える場面がある。実はこのドレスには、背中にマジックテープが仕込まれており、映画のテンポに合わせて瞬時に脱げるよう設計されていた。このように、BMW車内の空間までもが、物語の一部として活かされている。
BMWという名のスパイ
『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』で登場したBMW車は、単なる移動手段ではない。スタイリッシュで革新的なテクノロジーの象徴であり、イーサン・ハントたちの信頼すべきスパイ仲間だった。
未来的なコンセプトカー「Vision EfficientDynamics」、エレガントで力強い「6シリーズ」、そしてその舞台裏にあった現場のプロフェッショナリズム──。BMWがこの映画で示したのは、映画のリアリティとブランドの未来像が一致したときにこそ、本物の共演が生まれるという事実だった。