
ローラ・ダーン演じる『ジュラシック・パーク』(1993)のエリー・サトラー博士は当時の映画としては、化粧っけもなく、セクシーな衣装でもない女性キャラクターとしてめずらしい存在だった。そしてエリーは、多くの人々、特に科学の道に進む女性たちのインスピレーションの源となってきた。
エリー・サトラーはインスピレーションの源
ダーン自身も環境保護活動を精力的に行っており、米メディアTIMEに次のように語っている。
「テクノロジーの分野、科学の分野、古生物学の分野に進んだ女性たちが、いつもエリー・サトラーをインスピレーションの源として挙げています。本当に素晴らしいことです」
出典:Laura Dern on Returning to the ‘Jurassic Park’ World | TIME 2025年8月23日閲覧
“Women in tech, women in science, women who went into paleontology cite Ellie Sattler as an inspiration all the time. It’s incredible.”
『ジュラシック・パーク』の製作スタッフは、エリーの服装、危険なスタントに挑む行動力、そして彼女の象徴的なフェミニストとしてのセリフ一つひとつを、極めて意識的に、そして熱心に創り上げた。
古生物学者としてのエリー・サトラー博士
安全に運営できるか視察に訪れたアラン・グラント博士(サム・ニール)やイアン・マルコム博士(ジェフ・ゴールドブラム)とともにパークへと訪れたサトラー博士。恐竜の復活を目の当たりにし、化石からの推測が正しかったことに興奮するグラント博士、予期せぬアクシデントにより恐竜の暴走を危惧するイアン。その中で唯一、現代では太古の生態系がわからないまま環境の管理をする難しさや毒をもつ植物も混ざっており、恐竜が防衛本能から凶暴になる危険性を指摘する。
そしてパークの創設者ジョン・ハモンド(故リチャード・アッテンボロー)からの、女は男に守られる存在だという言動に対して「サバイバルにおける性差別については、私が私たちを救ってから戻ってきたら話しましょう(“We can discuss sexism in survival situations when I get back.”)」という名言も生まれた。これは、彼女がジェンダーの壁に屈せず、自らの能力で本質を見抜き危機に立ち向かう強い意志の表れだった。
環境保護へと活動を広げるエリー・サトラー博士
2001年の『ジュラシック・パークIII』に再登場してから21年ぶりに『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』(2022製作)で本格的にシリーズへと復活したダーン演じるエリー・サトラー博士。古植物学者としての知識を活かして巨大化したイナゴへの対処へと活動を広げていた。ダーンは『ジュラシック・パーク』での出来事はティラノサウルスが通りを歩く以外は現実に起こりうることだと監督のコリン・トレヴォロウから話があったとThe Guardianに語っている。
「フロリダで潜在的な病気対策として遺伝子組み換え蚊が放出されているとか。カンザス州上空で特定の種子を食べないイナゴの大群が目撃されたとか。こういう記事を読んでいると、『もうSFの世界じゃない! ジュラシック・パークは今や日常の物語だ! T・レックスが通りを歩いている以外はね』って思うんだ」
出典:‘We ain’t in science-fiction any more!’ Laura Dern on the return of Jurassic Park | Jurassic Park | The Guardian 2025年9月1日閲覧
この映画の中で描かれる「企業による生態系への介入」というテーマは、奇しくもローラ・ダーン自身が現実世界で取り組む活動と強く共鳴している。
ローラ・ダーンの気候変動に対する活動
ダーンはサトラー博士のような学者ではないものの、環境団体と連携し海洋保護活動のために180万ドル以上の資金を集めるのに貢献、メディアでの発信、ドキュメンタリー映画への参加により次世代により良い地球環境を残すように活動している。特にドキュメンタリー映画『コモン・グラウンド 大地を救う再生農業』(2023年製作)では、気候変動対策への積極的な取り組みが評価され、EMA継続的コミットメント賞(EMA Ongoing Commitment Award)を受賞した。
1993年にスクリーンに登場したロールモデルは、今やキャラクターと俳優自身が一体となり、フィクションと現実の両方で、より良い未来のために行動するパワフルな象徴となっている。