Image: Youtube/(C)COOP99 FILMPRODUKTION GMBH / LITTLE JOE PRODUCTIONS LTD / ESSENTIAL FILMPRODUKTION GMBH / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE 2019
幸せになる香りを放つ「リトル・ジョー」。しかしその花粉が人を操るかもしれない、というジェシカ・ハウスナー監督によるサイエンススリラーです。
人間だれしも「これさえあれば生きていける」というものがあります。もしくはそういうものを無意識に日々探して生きています。リトル・ジョーは花粉によって人間に、自分が唯一の幸せだと思い込ませるみたいです。
リトル・ジョーが花粉で人を変える3つの変異
リトル・ジョーは花粉によって脳に侵入し、人を変えてしまいます。見た目にはわかりませんが、花粉を吸ってしまった人はもう前とは違います。
それは次の3つのことが関係しています。
- オキシトシンの分泌を促す香り
- 花粉によって脳に侵入するウイルス
- 拡散力を強める突然変異
それぞれ説明します。
オキシトシンの分泌を促す香り
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研究者のアリスは、愛情を注ぐほどリトル・ジョーが幸せになる香りを放つように遺伝子組み換えしました。香りを嗅いだ人間は、オキシトシンの分泌が促され、幸せな気分になります。リトル・ジョーの遺伝子操作は、ウイルスベクターにより行われています。ウイルスベクターとは遺伝子情報を、細胞から細胞へと運ぶ役割をしてくれるものです。
幸せになる香りを生み出す遺伝子をどこから持ってきたのかは、わかりません。アリスはその遺伝子をウイルスベクターによって、リトル・ジョーに組み込みました。
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しかし従来のウイルスではなく、劇中での新しいRウイルスというまだ承認されていないウイルスを使ったウイルスベクターでした。そのためリトル・ジョーは、予想していなかった大量の花粉を放出する性質を持ちました。この花粉が人間に対して悪さをする、というところが「リトル・ジョー」の重要なポイントです。
花粉によって脳に侵入するウイルス
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リトル・ジョーは、花粉によって人を操ります。劇中でははっきりしませんでしたが、ここでは操るということにします。
花粉は植物の細胞です。その細胞が鼻から人間に侵入します。この仕組みを劇中では同僚のベラが、アリスにリトル・ジョーの危険性を訴えるときに説明していました。細胞は嗅覚受容体に移動し、大脳辺縁系へと運ばれます。この大脳辺縁系でリトル・ジョーのウイルスが増殖し、花粉を吸った人間は「何か」に感染してしまいます。
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大脳辺縁系は感情をコントロールする機能をもっています。大脳辺縁系に何か悪さをされると、行動や性格が変わってしまいます。
リトル・ジョーの香りによって分泌されるオキシトシンは「母親ホルモン」と呼ばれ、自分の子どもとの絆を強めるホルモンだと言われています。
リトル・ジョーの花粉によって感染するウイルスは、リトル・ジョーとの絆を強くする作用があるのではないかと考えられます。このウイルスに感染したものは、リトル・ジョーが人生で最優先になります。いままで人生で大事だったものが、リトル・ジョーに置き換わるだけなので、外見も変わらないし行動も大きくは変わりません。身近なひとからすると何かおかしく感じるし、第三者からはあまり変化がわからないという恐ろしい感染です。
花粉を大量に放つ突然変異
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リトル・ジョーは不稔性になるように品種改良されています。つまり自分では子孫を残すことができません。リトル・ジョーが変異したのは、この不稔性に対する対抗だと同僚のベラは指摘していました。自らは繫殖できないため、人間に自分たちを繁殖させようと。これはリトル・ジョーとの絆を強めるオキシトシンにつながります。
まとめ
リトル・ジョーがどういう仕組みで、花粉によって人間を操るのかをまとめました。ジェシカ・ハウスナー監督の脚本は、こうした生物工学の知識にも支えられています。
リトル・ジョー (字幕版)
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