
イーサン・ハントが絶体絶命のとき、トム・クルーズにとっても前代未聞のスタントであることを意味する。
映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』の最後、ガブリエルとの死闘を経たイーサンはパラシュートを背負って飛行機から飛び立つ。燃え立つ複葉機の火がイーサンのパラシュートへと燃え移り、絶体絶命のその姿にみているこちらの身体も思わず強張る。
イーサンのパラシュートが燃えてしまったにも関わらず、最後に無事に地面へと着地していた。この謎は技術的な面とストーリー的な面で解決される。
イーサンはなぜ助かったのか?
技術的な面では通常パラシュートはあらゆる不測の事態に備えて、予備のパラシュートも装備されている。ストーリーの面では、クリストファー・マッカリー監督は『ファイナル・レコニング』でイーサン・ハントを殺すことも考えたがそうしなかった理由を次のように答えている。
「物語を完全に終わらせた時、物語は消滅する。人生とはそういうものではない」…「映画が終わろうと終わらまいと、物語は続くのだ。」
出典:14 Mission: Impossible – The Final Reckoning Spoiler Secrets 2025年7月16日閲覧
(“When you fully tie off the story, the story ceases to be. And that’s not life,”… “Stories go on, whether or not the movies do.”)
イーサンのミッションはひと区切りついたとしても、イーサンやチームの人生はこれからも続いていく。イーサン・ハントは生きている。そう考えるだけでこの先、新しい映画が作られなくとも『ミッション:インポッシブル』の物語が終わることはない。
なぜ可能なのか?トム・クルーズの超絶スタント
イーサンにとっては映画の中だけの話だが、自分でスタントをするトム・クルーズにとっては現実の話だ。もちろんこの飛行機から落下するなかでパラシュートが炎上するアクションも自分でやっている。クルーズはこれまでも信じられないようなスタントをこなしてきたが、共通していることはあえてリスクは冒さないということ。
パラマウント・ピクチャーズが公開した動画にはトム・クルーズがスタッフと「パラシュートがねじれた状態を解消してから10秒以内に点火しなければいけない」と手順を確認する緊迫した様子がうかがえる。以前もシリーズのインタビューの中で「徹底してわからないことがない状態にしてスタントに臨んでいる」ことを明かしていた。
驚きなのは(このスタントをしただけでも驚きだが)、このアクションを16回も実行していること。そう、トム・クルーズのこだわりはスタントを自分でやることだけではなく、スクリーンの先で待っている観客のために、映像、アングル、タイミングすべてにこだわりをもつ。
この、パラシュートに火をつけ、予備のパラシュートを開くという複雑なアクションをトム自らの手で実行していること。こんな前代未聞のスタントを16回も繰り返したことは「炎上するパラシュートでのダイビング回数最多記録(most burning parachute jumps by an individual)」というチャレンジでギネス世界記録に認定された。
まとめ:物語と現実が交差する時、『ミッション:インポッシブル』は伝説になる
『ミッション:インポッシブル』で繰り広げられるイーサン・ハントの物語は「しょせん映画の中の話だ」とはならない。なぜなら生身のトム・クルーズが自分ですべてやっているから。
非現実的なことを現実的にやってのけてしまう。だからこそ不可能に思えるミッションをなんとか遂行するイーサン・ハントの姿に毎度感動してしまう。