
イルサ・ファウストは『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』で、イーサン・ハントの前に突如として現れる。彼女はいったい何者なのか。敵か、味方か?それとも、恋の相手なのか?
そのどれとも判断がつかないまま、物語は進み、いつの間にかイーサンも観客も彼女に心を奪われている。そんなイルサのことを脚本を書いた監督でさえ「脚本を書いていても彼女の真の姿をとらえるのは難しかった」と語っている。
強く美しく、謎に包まれたイルサ・ファウストとは何者なのだろうか。
イルサ・ファウストとは

演じたレベッカ・ファーガソンは、イルサのキャラクターを次のように語っている。
she’s mysterious she’s a traveler and she has a soul and she has dignity and she has vulnerability
Rebecca Ferguson Interview | MISSION: IMPOSSIBLE – ROGUE NATION – YouTubeより引用
[彼女は謎めいていて、旅人であり、魂を持ち、尊厳を持ち、そして弱さも持っている]
イーサンが初めてイルサと遭遇する地下室。主演でもありプロデューサーでもあるトム・クルーズは、このシーンを「ボーイ・ミーツ・ガール」と名付けている。アクションをもっと物語に結び付けるためにミュージカルを研究していた時に思いついたテクニックだ。
ウィーン国立歌劇場での再会シーンは「初デート」と名付けられ、演出のすべてにそのテーマが浸透している。
we’re going through these the the Journey of these characters and the structure it also informs it informs lighting it informs architecture it informs dress
Tom Cruise Chats ‘Mission: Impossible – Rogue Nation’ – YouTubeより引用
[私たちはこれらのキャラクターの旅と構造を体験します。それは照明にも影響を与え、建築にも影響を与え、衣装にも影響を与えます。]
イーサンとイルサからほのかに感じるロマンスは、そういうところから来ていると感じる。
観客は彼女の行動に戸惑いながらも、「味方であってほしい」と願ってしまう。それが、イルサ・ファウストというキャラクターが放つ最大のスリルだ。
ヒロイン像を塗り替えたイルサ・ファウスト

レベッカ・ファーガソンは、イルサをただのヒロインとしては捉えていない。「これまでのヒロインたちがシリーズに素晴らしいものをもたらしてきた」と敬意を払い、比較すべきではないとし、イルサはエージェントで基本的に異なる存在だと考えている。
イルサはまるでもう一人のイーサンのように感じられますが、その戦闘スタイルはまったく異なる。スタント・コーディネーターのウェイド・イーストウッドとトム・クルーズにより、イルサの戦闘スタイルは作り上げられたという。
レベッカ自身はこう語っている:
Tom had arranged for me to have two months of training … six hours a day, six days a week
Mission Impossible 5: Rogue Nation Official Interview – Rebecca Ferguson – YouTubeより引用
[トムが2ヶ月間のトレーニングを手配してくれました。1日6時間、週6日です]
また、ウィーン国立歌劇場の屋上から懸垂下降するシーンでは、重度の高所恐怖症を抱えながらも自ら演じた。彼女の強さは役の中だけでなく、レベッカ自身の中にも宿っている。
そしてその強さの裏には、常に揺れ動く葛藤がある。
MI6の命令でシンジケートに潜入しているが、彼女は常に組織に対して距離を保ち、そこに居場所を見い出していない。その姿は、どの陣営にも属しきれないスパイの孤独を体現している。
そんな姿にイーサンとの絆を強く感じさせる。
なぜ“続き”を願ってしまうのか?
マッカリー監督は当初イルサをイーサンと敵対するキャラクターとして構想していた。そこからキャラクターは、ロマンチックなものよりも対等な関係へと進化を遂げた。
ソロモン・レーンという巨大な敵を倒した後、観客の視線は自然と別の問いへと向かう。イーサンとイルサの関係は、どこへ向かうのだろう?その問いが、物語を閉じてもなお、静かに胸の奥に残る。
彼女の姿が、去ったあとも消えないのは、きっと終わりが描かれていないからだ。
イルサ・ファウストは続編『フォールアウト』に再登場する。