あの絶望はCGじゃない!『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』潜水艦シーンの恐怖と撮影の裏側

あの絶望はCGじゃない!『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』潜水艦シーンの恐怖と撮影の裏側
※画像はイメージ

この記事は映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』に関する重大なネタバレを含みます。

前作『デッドレコニング』でその存在だけがささやかれていたロシアの最高機密潜水艦「セヴァストポリ」とようやく本作『ファイナル・レコニング』で対面する。潜水艦「セヴァストポリ」のシーンでの一番の脅威は、動きがあることだった。

スポンサーリンク

なぜイーサンは潜水艦を目指したのか?

いまやAI「エンティティ」によってデジタル情報は汚染され、世界は核戦争の危機に瀕するなか、各国政府が追い求めた2本の鍵からなる十字の鍵。この鍵はAIエンティティを支配、もしくは消去するために必要なソースコードが入っているセヴァストポリの反音響システム「ポドコヴァ」を手に入れるために必要なものだった。

セヴァストポリの座標を手に入れたイーサンは、ベーリング海に沈む潜水艦へと潜入する。

ただの潜入ではない!「潜水艦との格闘」

水圧と闇

10年以上海底に沈んでいた潜水艦に潜入するイーサン・ハント。潜水艦が沈むのはベーリング海のおよそ水深150メートル。一般的なダイビングでは40mほどが限界とされている中で、最新の潜水スーツを着ているとはいえ、この潜水艦に到達するだけですでに偉業を達成したような気持ちになる(スクリーンでみているだけでも)。

「水の移動」と「艦体の回転」という究極のトラップ

沈没船といえど潜水艦のため内部に潜入するときには、海水で満たされた場所とそうではない場所と様々だ。イーサンが奥へと進むにつれて海水も浸水していく。

10年海底に沈み続けた潜水艦も内部での海水の移動で重心が変わればバランスが変わる。大まかに見ればチューブのような形をしている潜水艦は海底で回転をはじめる。艦内の水の移動と潜水艦自体の回転。このふたつの動きがみていてすごくハラハラしてしまう。目的のAIエンティティのソースコードが入っているポドコヴァはすんなりと手に入るが、それよりもまるで潜水艦との格闘シーンが繰り広げられる。

しかしこれはクリストファー・マッカリー監督の計算された演出だった。

この潜水艦に水を入れると、ただ泳いでいるだけになることに気づきました。まるで幽霊のような、危険が明確な、単調なシーンです。しかし、もしこの潜水艦の一部が密閉されていて、イーサンが潜水艦の中で水を移動させなければならなかったら、彼は潜水艦の中を2つの状態で通過する機会を持つことになります。
(realized that once you flood this thing with water, you’re just swimming through it. It’s kind of ghostly and the hazards are specific and it’s kind of one note. However, if portions of this had been sealed and Ethan was having to move water through the submarine, you’d now have opportunities for him to go through the submarine in two states)

出典:Q&A with Christopher McQuarrie – National Board of Review 2025年7月17日閲覧

潜水艦内部での水の移動により単調なシーンではなくなり、その移動で潜水艦自体が動き出すアイデアも自然と現場で出てきたという。

リアリティへの執念が生んだ、驚くべき撮影の裏側

製作期間2年半!850万リットルの水と“回転する潜水艦”

この潜水艦シーンを実現するために、850万リットルの巨大タンク、そしてそのタンクを360度回転、両方向45度ピッチング可能なジンバルを製作するのに2年半かけている。その間、マッカリー監督は他の準備を進めながらトレーラーの窓から作られていく様子をみていたという。

イーサンを照らしたスーツに隠された危険

また映画のなかではイーサンが減圧症から回復する期間を短くするために装着していたスーツ。実際の撮影では暗闇の海底でイーサンの顔を観客がみるのに役だった。しかし映画の中ではイーサンを助けたスーツだが、実際の撮影では10分以上着用するとトム・クルーズが低酸素になってしまうというリスクのあるものだった。

まとめ:『ファイナルレコニング』の潜水艦は、シリーズ最高のアクションステージだった

ストーリーから得られるドキドキ、ワクワクそして達成感は、撮影するスタッフ、俳優には常にリスクと隣り合わせでもある。潜水艦「セヴァストポリ」は、単なる舞台装置ではなく、物語とアクション、そして製作陣の狂気的な情熱が完璧に融合した「キャラクター」とも言うべき存在だった。