
『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(2018)で描かれる、世界を脅かす3つのプルトニウム。物語のクライマックスで爆発が迫るのは2つの核爆弾だった。では、なぜそもそも3つ必要だったのか?
また、テロ組織〈神の使徒アポストル〉は、なぜ取引材料としてプルトニウムを提示し、思想的指導者であるソロモン・レーンの奪還にこだわったのか。
この記事では、クリストファー・マッカリー監督自身の言葉をヒントに、プルトニウムにまつわる謎を考察する。
結論は「2つ」と「1つ」の使い分けにあった
先に結論を述べると、プルトニウムが3つあった理由は、物語の機能を「クライマックス用(2つ)」と「中盤の展開用(1つ)」に分けることで、アクションの興奮と主人公の葛藤の両方を描くためだった。
クライマックスを機能させる「2つのプルトニウム」

まず、物語のクライマックスで2つのプルトニウム(核爆弾)がなぜ必要だったのか。それは、増え続ける登場人物たち全員に、世界を救うための重要な役割を与えるためだった。
マッカリー監督は、映画ニュースサイトScreen Rantのインタビューで、クライマックスの演出意図をこう語っている。
And I designed that whole complication, of the two bombs at the end of the movie, to give everybody their due. It had to feel like it needed every single person to be working perfectly in order for things to turn out okay.
Christopher McQuarrie Interview – Mission: Impossible – Falloutより引用
[映画の最後に2つの爆弾を仕掛けるというあの複雑な演出は、すべての登場人物に公平さを与えるためにデザインしました。物事がうまくいくためには、すべての登場人物が完璧に機能しなければならないと思わせる必要がありました。]
ソロモン・レーンとジョン・ラーク(オーガスト・ウォーカー)による2つの核爆弾の爆発を阻止できるか――。このハラハラドキドキする展開は、まさにマッカリー監督によって考え抜かれた演出だった。
トム・クルーズ演じるイーサンはもちろん、ルーサー、イルサ、ベンジー、そしてミシェル・モナハン演じるジュリアまで、この多くのキャラクターが一人でも欠けていたら世界を救うことはできなかった。「2つの爆弾」という設定は、このチームワークを描くための、見事な舞台装置となっていた。
物語に深みを与える「残りの1つのプルトニウム」

クライマックスが「2つ」で機能するのは分かった。では、なぜ物語の始まりから「3つ」である必要があったのか。その答えは、「残りの1つ」が果たした役割にある。
この「1つ」は、物語の中盤でイーサン・ハントというキャラクターの葛藤を深めるために、決定的な役割を果たした。
物語の冒頭、イーサンは仲間のルーサーを守るために、世界を破滅させかねないプルトニウムを手放す。この「仲間の命>ミッション」という彼の選択こそが、シリーズを貫く彼の人間性だ。
失われたプルトニウムを取り戻すために登場するのが、闇ブローカー、ホワイト・ウィドウ。彼女はイーサンに取引を持ちかける。「ソロモン・レーンを脱走させれば、プルトニウムを渡す」と。
この取引は、正義を重んじるイーサンにとって究極の選択だ。
- 仲間を救うために世界を危険にさらした(最初の選択)
- その尻拭いのため、今度は凶悪なテロリストを白昼堂々と脱走させ、警察官を襲撃しなければならない(次の選択)
もしプルトニウムが最初から2つだったら、この「レーン脱走」というプロットはうまく結びつかなかった。「残りの1つ」があったからこそ、ウィドウとの取引が成立し、イーサンはより深い倫理的ジレンマに直面することになった。
プルトニウムが3つあることで重厚なストーリー
このように、プルトニウムが「3つ」あったことで、単なるアクション映画に留まらない、主人公の人間性に迫る重厚なストーリーが機能している。