映画『夏目アラタの結婚』丸山礼の演技評価|「違和感」が「感動」に変わった理由と台本になかった涙の裏側

映画『夏目アラタの結婚』丸山礼の演技評価|「違和感」が「感動」に変わった理由と台本になかった涙の裏側
映画への初出演で脇役ながら共演した柳楽や中川から高評価を得た丸山。
Image: 映画『夏目アラタの結婚』本予告 2024年9月6日(金)公開 – YouTube

映画『夏目アラタの結婚』において、主人公・夏目アラタの同僚である「桃ちゃん」こと桃山香役を演じた丸山礼。

お笑いタレントとしてのイメージが強い彼女の起用に、鑑賞前は「なぜこのキャスティングなのか」と疑問もあった。

しかし、物語中盤のあるシーンを境に、彼女への印象が「違和感」から「共感」へと一変した。

本記事では、丸山礼の演技がなぜ観客の心を動かしたのか、その理由を独自の考察とインタビューで語られた「舞台裏の事実」を交えて解説する。

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お笑い芸人としてのイメージと、初期の「違和感」

丸山礼といえば、ロバート秋山のモノマネや土屋太鳳の顔マネ、あるいはドラマ『ワタシってサバサバしてるから』でのコミカルなキャラクターの印象が強い。

本作『夏目アラタの結婚』はシリアスなサスペンス要素を含む作品であるため、公開前はバラエティ色の強い彼女が映画の世界観に馴染むのか懸念もあった。

実際、映画の序盤において彼女が見せる明るい振る舞いは、演じているというよりも「丸山礼そのもの」が出ているように見える瞬間がある。連続殺人犯や死刑囚といった重いテーマが続く中で、彼女の存在は唯一の「日常」や「癒やし」の象徴である一方、その持ち前の明るさが映画のトーンに対して異質に映る可能性もあった。

しかし、この「日常的な明るさ」こそが、後のシーンで訪れる感情の落差を際立たせるための重要な布石となっていた。

評価が一変した「面会室」での涙

彼女への印象が決定的に変わったのは、死刑囚・品川真珠(黒島結菜)との面会室でのシーン。

アラタのことを心配し、真珠に対して感情をぶつける桃山香。しかし、逆に真珠から鋭い言葉で追い詰められ、彼女は涙を流すことになる。

それまでの「明るい桃ちゃん」としての演技とは異なり、このシーンで見せた涙と表情は、完全に役に入り込んだ人間のリアルな反応としてスクリーンに映し出された。

なぜ、このシーンだけこれほどまでに「真珠に心を揺さぶられた姿」がリアルだったのか。そこには、演技の技術を超えた明確な理由が存在した。

台本には書かれていなかった「涙」の真実

ミーナでのインタビューによると、実はこの面会室のシーン、台本のト書きには「泣く」という指定はなかったという。

撮影時、目の前で演じる黒島結菜の圧倒的な芝居を見せつけられた丸山は、役としての悔しさはもちろん、丸山礼個人としても「私もこんなふうになりたい」という嫉妬心に近い感情が湧き上がってきたと語っている。

その溢れ出る感情を監督が「涙を流してもいいですよ」と肯定したことで、あの感情むき出しのシーンが生まれた。

つまり、観客がスクリーンで目撃した涙は、演技プランとして用意されたものではなく、共演者の熱演に当てられて引き出された「本物の感情」だったのである。このドキュメンタリー的なリアリティが、観客の心を動かす要因となった。

共演者が語る「映画の神様」が降りた瞬間

この丸山礼の「変化」には、共演した実力派俳優たちもオフィシャルサイトでのコメントで舌を巻いている。

共演シーンの多かった中川大志は、彼女の演技について「映画の神様がおりてくるというか、二度と起きないゾワっとする瞬間がたまにある」と評した。

技術で固めた演技ではなく、その瞬間の空気に身を任せ、共演者と本気で対峙したからこそ生まれた「二度と撮れない瞬間」が、本作における丸山礼のハイライトとなっている。

結論:丸山礼が演じた「普通」が真珠の異質さを際立たせた

当初感じられた「芸人が映画に出ている」という違和感は、物語が進むにつれて「異常な状況に放り込まれた一般人の戸惑い」として機能し、最終的には観客の感情移入を誘うトリガーとなった。

黒島結菜演じる品川真珠の底知れぬ恐ろしさを際立たせるためには、それを受け止めて心が壊れそうになる「普通の人間」のリアクションが必要不可欠だった。丸山礼は、計算外の涙を流すほど役に没入することで、その役割を全うした。