【衣装解説】『プラダを着た悪魔2』の劇中ブランドを徹底解剖!アンディがヴィンテージを愛する理由とは?

第1作目の全身シャネル姿のアンディと、第2作目のヴィンテージスタイルで歩くアンディの比較
Image: 左The Devil Wears Prada (2006) Trailer #1 | Movieclips Classic Trailers – YouTube/右The Devil Wears Prada 2 | Final Trailer – YouTube 2026年4月25日閲覧

映画『プラダを着た悪魔』といえば、ストーリーの面白さはもちろん、スクリーンを彩る華やかなファッションが最大の魅力。待望の続編『プラダを着た悪魔2』でも、各キャラクターの衣装やスタイリングに早くも熱い視線が注がれている。

すでに公開されたビジュアルや予告編からは、「オールドコーチ」や「ヴァレンティノ」、「ルブタン」といった具体的なブランドやアイテムが次々と特定され、ファンの間で大きな話題を呼んでいる。

本記事では、今作の衣装を手掛けるモリー・ロジャースの証言をもとに、アンディが全身ハイブランドからヴィンテージスタイルへと変化した理由や、ミランダとエミリーのスタイリングの裏側を徹底解剖する。

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【スタイリストの継承】パトリシア・フィールドのDNAと「タイムレス」へのこだわり

無数のハイブランドの服や靴、バッグが並ぶ『ランウェイ』誌の衣装部屋
前作から受け継がれた、時代を超越する「タイムレス」な衣装哲学。
Image: The Devil Wears Prada 2 | Final Trailer – YouTube 2026年4月25日閲覧

新衣装デザイナー、モリー・ロジャースの抜擢

2006年に公開された前作『プラダを着た悪魔』は、登場人物たちの華やかなファッションが話題を呼び、衣装を担当したパトリシア・フィールドはアカデミー賞の衣装デザイン賞にノミネートされた。

今作『プラダを着た悪魔2』では、彼女の下で長年アシスタントを務めていたモリー・ロジャースが衣装デザインのバトンを受け継いでいる。ロジャースは、前作だけでなく人気ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』などでもフィールドと共に仕事をしてきた経験を持つ人物だ。今回は彼女が単独で衣装部門のトップに立ち、キャラクターたちの新たなワードローブを作り上げている。

トレンドを追わない「タイムレス」な服作り

ファッション業界の最前線を描く映画でありながら、ロジャースが今作の衣装選びで最も重視したのは「タイムレス(時代に左右されないこと)」である。これは、前作でパトリシア・フィールドが確立した哲学をそのまま引き継いだものだ。

ロジャースは、衣装の方向性について次のように語っている。

パットが前作で確立した衣装の哲学を継承することでした。彼女の目標は、ファッション/雑誌業界を題材にした現代映画でありながら、衣装をできる限り時代を超越したものにすることでした。

海外メディア Us Weekly Costume Designer Spills on The Devil Wears Prada 2 Fashion – Us Weekly より引用 2026年4月25日閲覧

最新の流行(トレンド)ばかりを取り入れると、映画を見たその瞬間は新しく見えても、数年後には時代遅れになってしまうことがある。そのため、ロジャースは「今後20年間持ちこたえられないと分かっている服は、どんなに返品するのが辛くても、本当に諦めなければならなかった」と述べ、一時的なトレンドではなく、長く着られるルックを作ることにこだわった。

この「タイムレス」な服作りへのこだわりによって、ミランダの威厳やアンディの成長といったキャラクターの個性が、流行に流されることなく、クラシックなシルエットとして画面に表現されているのである。

【比較】20年間で変わった彼女たちのシグネチャー・スタイル

キャラクター前作(2006年)今作(2026年)
アンディ全身シャネル
(借り物のハイエンド)
ヴィンテージ × ヴァレンティノ
(自立したミックススタイル)
ミランダプラダ、エルメス
(絶対的な女王)
タイムレスなユニフォーム
(ラガーフェルドへの敬意)
エミリーディスカウントストア
(背伸びした私服)
ディオール、ルブタン
(重役としての戦闘服)

【アンディの変化】全身ハイブランドから「ヴィンテージ×実用的」へ

オールドコーチのメッセンジャーバッグを肩に掛けたアンディ
世界を飛び回る記者へと成長したアンディを象徴する、ヴィンテージのコーチのバッグ。
Image: The Devil Wears Prada 2 | Final Trailer – YouTube 2026年4月25日閲覧

コンセプトは「フェミニン・メンズウェア」

前作のアンディは、「シャネル」のブーツなど全身を高級ブランドで固めるスタイルが印象的だった。しかし、今作では衣装のコンセプトが大きく変わっている。今作の衣装デザイナーであるモリー・ロジャースのアイデアノートの最初のページには、「フェミニン・メンズウェア(女性らしい紳士服)」という言葉が大きく書かれていた。

ロジャースは、映画『アニー・ホール』(1977)のスタイルや名女優キャサリン・ヘプバーンの着こなしを掛け合わせたようなイメージで、アンディの衣装をデザインしている。主にベストや柔らかいブレザー、ブラウスにハイウエストのパンツといったアイテムをアンディに着せている。

象徴的な「オールドコーチ」とヴィンテージの起用理由

アンディは、世界中を飛び回る報道記者へと成長した。彼女の現在のクローゼットは、生活感があり、各地のコンサイメントショップ(委託販売店)で見つけたヴィンテージアイテムと新しい服をミックスしたスタイルになっている,。アン・ハサウェイ本人は、この変化の理由を次のように説明している。

最近の視聴者は、以前よりも少し賢くなっています。そこで私たちが考えたストーリーは、アンディがランウェイで働いていた時に色々なことを学んだ、というものです。ジャーナリストとしてキャリアを積む中で、彼女は人里離れた場所にある、とても楽しい中古品店をたくさん訪れました。そのため、彼女は20年間も中古の高級品を買い続けていて、実はとても素敵なワードローブを持っているのです。

海外誌 PEOPLE Anne Hathaway Is PEOPLE’s World’s Most Beautiful Cover Star 2026 — That’s All! より引用 2026年4月25日閲覧

衣装担当のロジャースも、「アンディは世界を旅する人なので、どこかへ出張したときに委託販売店やヴィンテージショップで服を買うだろうと考えました。彼女は賢く、ファッションに無頓着ではありません。『ランウェイ』での経験からいくつか学んでいるのです」と語っている。

特に注目を集めているのが、過去に作られた「コーチ(Coach)」のメッセンジャーバッグだ。ヴィンテージのジャンポール・ゴルチエのベストとパンツに合わせるなど、劇中で何度も登場する。ロジャースは、このバッグをアンディのキャリアを象徴するアイテムとして選んだ理由をこう分析している。

彼女のヴィンテージのコーチのメッセンジャーバッグは完璧なアクセサリーです。記者の仕事用バッグとして説得力がありながらも、洗練されたセンスと知識を感じさせます。

海外メディア Us Weekly Costume Designer Spills on The Devil Wears Prada 2 Fashion より引用 2026年4月25日閲覧

洗練されたハイブランドの着こなし

ヴィンテージや実用的なアイテムを基本としつつも、要所では洗練されたハイブランドの着こなしも披露している。例えば、ミラノのホテルでの対決シーンでは、トム・フォードのシルクブラウスに、ヴァレンティノのパラッツォパンツ(裾が広がったゆったりとしたパンツ)、ルイ・ヴィトンのジャケットを合わせている。

また、報道賞の授賞式シーンでは、ドルチェ&ガッバーナのブレザーに、ロエベのストライプウールパンツ、そしてジェームズ・バンクスがカスタマイズしたタムシュカのパールネックレスを着用している。これらは、記者としての働きやすさを保ちながらも、『ランウェイ』で培ったファッションの知識が生きていることを証明するスタイリングである。

自立した女性へと成長したアンディ。アン・ハサウェイがこの役を20年ぶりに再演した真意についてはこちらの記事「『プラダを着た悪魔2』キャスト続投の真実|20年後のアンディとエミリー、なぜ彼女たちが必要だったのか?

【ミランダの威厳】究極の「ユニフォーム」と驚きのハイ&ロー

赤いヴァレンティノのロックスタッズパンプスの足元アップ
マーケティングチームの意向で予告編に採用され、衣装担当にとっては不本意だったという赤いヴァレンティノのヒール。
Image: The Devil Wears Prada 2 | Teaser Trailer – YouTube 2026年4月25日閲覧

カール・ラガーフェルドにインスパイアされた制服

絶対的な権力者であるミランダ・プリーストリーの衣装は、その威厳と自信を示すために、彼女だけの「ユニフォーム(制服)」とも呼べるスタイルが確立されている。衣装を担当したモリー・ロジャースは、ファッション界の巨匠カール・ラガーフェルドを参考にしたと語っている。

ロジャースは、ミランダ・プリーストリーの定番シルエットをユニフォームとして採用したいと考えていた。「私たちはカール・ラガーフェルドのような、ただ機能するユニフォームにこだわった人たち。最初の映画では、「クロップドジャケットとペンシルスカートが流行っていたので、それが続編の方向性を決める上での指針となった」とロジャースは語る。

映画プロダクションノート PRODUCTION NOTES より引用 2026年4月25日閲覧

トレンドをむやみに追いかけるのではなく、シャープな肩のラインや柔らかいスカートなど、クリーンで静かなスタイルを選ぶことで、ミランダがその空間を支配するような圧倒的なオーラが表現されている。

薬局(CVS)のピアスと、物議を醸した赤いヴァレンティノ

ミランダの衣装には、超高級ブランドだけでなく、驚くべき身近なアイテムも取り入れられている。メリル・ストリープ本人が衣装選びに深く関わり、アメリカの一般的な薬局チェーン「CVS」で買ってきたシルバーのフープピアスを劇中で採用させたというのだ。

メリルが最初のフィッティングにやって来て、ハンドバッグから完璧なサイズのシルバーのフープピアスを取り出したんです。(中略)ミランダは頼りないピアスなんて絶対につけません。メリルが買ってくれたピアスはたった1組しかなくて、なくしてしまうんじゃないかと本当に心配でした!

映画プロダクションノート PRODUCTION NOTES より引用 2026年4月25日閲覧

このようにハイブランドと日用品を組み合わせる見事な「ハイ&ロー」の着こなしがある一方で、衣装デザイナーが意図しなかったアイテムが使われた事件もあった。

予告編でミランダが履いていたことで話題になった、赤い「ヴァレンティノ」のロックスタッズパンプスだ。実はこれはマーケティングチームが予告編のために用意して履かせたものであり、衣装担当のロジャースにとっては全く不本意な選択だったという。

映画『プラダを着た悪魔2』の衣装デザイナーは、予告編で最も話題になったファッションシーンの一つから距離を置いているが、ヴァレンティノのロックスタッズヒールがミランダ・プリーストリーの足元にどのようにして登場したのかという話は、なかなか興味深い。

モリー・ロジャースはヴォーグ誌に対し、話題となった予告編のシーンに登場した、大胆な赤と金のスタッズがあしらわれた靴は、決して彼女自身が選んだものではないと明かした。

海外メディア Geo News ‘Devil Wears Prada 2′ designer on Meryl Streep’s heels in movie: ‘I’m innocent’ より引用 2026年4月25日閲覧

ロジャースは、この靴が使われたことについて「遠くから呪いの人形に針を刺していましたよ」と持ち前のユーモアを交えて語っている。ミランダという緻密に計算されたキャラクターの衣装選びが、単に「かわいい靴を選ぶ」以上の繊細な作業であることを示す、ファッション好きにはたまらない裏話だ。

完璧なスタイルを貫くミランダだが、その内面には『ある異変』が隠されているのかもしれない。予告編のセリフの謎についてはこちら「『プラダを着た悪魔2』ミランダは認知症か?「誰?」のセリフに隠されたガスライティングと権力闘争を徹底考察

【エミリーの出世】ディスカウントストアから「ルブタン」を履く幹部へ

第1作目のエミリーと、第2作目でラグジュアリーブランドを着こなす堂々としたエミリー
ディスカウントストアの服で奔走していたアシスタントから、ハイブランドを自由に着こなす権力者へと劇的なアップグレードを果たしたエミリー。
Image: 左The Devil Wears Prada (2006) Trailer #1 | Movieclips Classic Trailers – YouTube/右The Devil Wears Prada 2 | Official Trailer – YouTube 2026年4月25日閲覧

ラグジュアリーブランドの重役への劇的なアップグレード

前作でミランダの第一アシスタントとして奔走していたエミリーは、今作では高級ブランド「ディオール」の米国事業を統括する重役へと大出世を遂げている。

かつては安いディスカウントストア(センチュリー21)でやりくりしてファッション業界にしがみついていたアシスタントが、今やハイブランドの服を自由に身にまとう立場になった。この劇的なアップグレードが、彼女の現在のワードローブの根底にある。

チーム全員が奪い合った、エッジの効いた攻めのスタイリング

ディオールの重役という設定だが、彼女の衣装は決してディオール一色に偏ってはいない。エミリーの持つ野心や計算高さを表現するため、あえて攻撃的でエッジの効いたスタイリングが採用されている。

衣装担当のモリー・ロジャースは、今作のエミリーの衣装が現場のスタッフにいかに人気だったかを次のように明かしている。

ロジャースによると、エミリーは彼女のチームの買い物担当者全員が、斬新なスタイルに挑戦できるキャラクターだったため、彼女のために服を選びたいと思っていたという。「最初の映画でエミリーが着ていた服はすべてセンチュリー21のものでした。今回は、みんなが彼女の服を手伝いたいと申し出てくれました。」

映画プロダクションノート PRODUCTION NOTES より引用 2026年4月25日閲覧

予算がつき、思い切りエッジィなスタイリングが可能になったことで、エミリーは衣装スタッフたちにとって一番着せ替えがいのあるキャラクターとなった。

ロジャースはエミリーのスタイリングの意図をこう語っている。

エミリーはディオールで働いていますが…全身ディオールにするのは嫌でした。あまりにも単調になってしまうからです。最初の映画と同じデザイナー、リック・オウエンスやヴィヴィアン・ウエストウッドの服に、よりエッジの効いたブランドをミックスしました。彼女は常にファッションの最先端を行く人ですから…リスクを恐れず、自分のために行動する人です…彼女はタフです。

海外メディア Us Weekly Costume Designer Spills on The Devil Wears Prada 2 Fashion より引用 2026年4月25日閲覧

劇中で彼女は、クリスチャン・ルブタン(Louboutin)のサイハイブーツや、リック・オウエンスのドレスなどを着こなしている。これらは単なる高級品ではなく、彼女がこの20年間で培ってきた「強さ」と「攻めの姿勢」を視覚的に証明する戦闘服として機能しているのである。

まとめ:最大のストーリーテラーとしてのファッション

『プラダを着た悪魔2』のファッションは、単にスクリーンを美しく彩るためだけのものではない。アンディ、ミランダ、そしてエミリーという3人の女性が、出版不況やデジタル化という激動の20年間をどう生き抜き、どのように変化したのか、もしくは変わらないものを物語る「最大のストーリーテラー」だ。

映画館に足を運ぶ際は、彼女たちが発するセリフだけでなく、その身にまとったブランドやスタイリングの意図にもぜひ注目してほしい。衣装に隠されたメッセージを読み解くことで、彼女たちの物語をより深く、より豊かに楽しむことができるはずだ。

パトリシア・フィールドが魔法をかけた前作のファッション。新作を観る前に、あの伝説の『シャネルのブーツ』の変身シーンをもう一度おさらいして、モリー・ロジャースがどうDNAを引き継いだのか確かめてみてください。