『マスターズ・オブ・ユニバース』ニコラス・ガリツィンが演じるヒーマンとアダムの二面性。涙の変身シーンと本当の強さ

パワーソードを背負い、堂々とした立ち姿を見せるニコラス・ガリツィン演じるヒーマン
圧倒的な「強さ」と人間らしい「弱さ」を併せ持つ、ニコラス・ガリツィン演じる新生ヒーマン。
Image: Masters of the Universe | First Look – Featurette / YouTube 2026年6月2日閲覧

「強さ(筋肉)」だけがヒーローの条件ではない。映画『マスターズ・オブ・ユニバース』でニコラス・ガリツィンが演じる主人公は、圧倒的な筋肉を持つ無敵の戦士「ヒーマン」と、自分の弱さを知る気弱な若者「アダム」という、全く異なる二つの顔を持っている。傷つきながらも「I have the Power!」と叫んで自らの力を受け入れる彼の姿は、現代の私たちが共感できる本当の勇気を教えてくれる。

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地球で働く「気弱な人事部員」アダムと、宇宙最強の戦士ヒーマンの大きなギャップ

地球で冴えない表情を浮かべ、少し背中を丸めて歩く変身前のアダム
地球の人事部で働く孤独な青年アダム。ニコラスは世界に押しつぶされそうな彼の重い歩き方まで繊細に演じ分けている。
Image: Masters of the Universe | Heroes of Eternia – Featurette / YouTube 2026年6月2日閲覧

全く違う二つの顔。歩き方まで変えたニコラスの繊細な役作り

本作のアダムは幼い頃に地球に送られ、大人になった今は「人事部(HR)」の社員として働いている。誰も信じてくれない故郷エターニアの話を繰り返す彼は、周囲から浮いた孤独で冴えない青年として描かれている。

この気弱なアダムと、宇宙最強の戦士ヒーマンには明確な二面性が設定されている。トラヴィス・ナイト監督はエンタメ誌「Empire」の記事において、アダムは「共感」を象徴し、ヒーマンは「力」を象徴しているとキャラクターの違いを説明している。

全く異なる二つの顔を演じ分けるため、アダムとヒーマンを演じたニコラス・ガリツィンは、身体の動かし方にまで徹底的にこだわった。エンタメ情報サイト「IMDb」のインタビュー動画によると、彼は企業の中間管理職として世界に押しつぶされそうになっているアダムを表現するため、背中を丸め、一歩一歩が重く感じられるような歩き方を意識したという。一方でヒーマンを演じる際は、典型的な戦士のように胸を張った堂々とした身体性になるよう、二つのキャラクターの肉体的な違いを明確に演じ分けたと同メディアに対し明かしている。

人事部で働く気弱な青年という意外な設定と、宇宙最強の筋肉を持つ戦士。ニコラス・ガリツィンの繊細な役作りによって表現されるこの強烈なギャップを知ることで、キャラクターが持つ二面性への興味がさらに深まる。

なぜ彼が選ばれたのか?監督が求めたのは「筋肉」ではなく「魂」

インタビューに真剣な眼差しで答えるニコラス・ガリツィンの素顔
トラヴィス・ナイト監督が主人公に求めたのは、単なる筋肉ではなくキャラクターの「魂」を表現できる繊細な演技力だった。
Image: “He Believes in the Goodness of People — We Need That Right Now” | Nicholas Galitzine on He-Man MOTU / YouTube 2026年6月2日閲覧

ボディビルダーではなく、ニコラス・ガリツィンが起用された本当の理由

ヒーマンといえば、巨大な肩幅や太い腕など、圧倒的な筋肉を持つキャラクターとして広く知られている。しかし、上述エンタメ誌「Empire」の記事によると、トラヴィス・ナイト監督はキャスティングにおいて「肉体」ではなく、キャラクターの「魂」を表現できる人物を探していたと明言している。アダムとヒーマンが持つ二面性のうち、アダムの共感力や誠実さを表現することが作品の核になると考えていたからだ。

監督が求めていたのは、ユーモアや人間らしい脆さを表現できる高い演技力だった。エンタメ情報メディア「The Nerds of Color」の記事によると、ニコラス・ガリツィンはオーディション当時、決してアクション俳優のような体つきではなかったものの、監督は彼に会ってすぐに「この人しかいない」と確信したという。同メディアに対し監督は、彼の内面にある深い共感力こそが最大の武器であり、肉体は後から鍛え上げればいいと考えていたと語っている。実際にガリツィンは別人となって数か月後の現場に登場した。

ニコラス自身も、このキャラクターの内面に深い共感を寄せている。エンタメ系YouTubeチャンネル「HeyUGuys」のインタビュー動画において彼は、アダムが自身の抱える心の痛みを和らげるためにユーモアを使っている点を指摘し、それがキャラクターに魅力的な人間味を与えていると同チャンネルに対し語っている。

1日5000キロカロリーの過酷な日々!「筋肉」を後から作り上げた執念の肉体改造

監督の期待に応えるため、ニコラスは凄まじい肉体改造に挑んだ。エンタメ情報サイト「E! News」のインタビュー記事によれば、筋肉を増やす増量期には1日最大5000キロカロリーを摂取し、毎日3時間のウェイトリフティングを行ったという。

さらに過酷だったのは撮影中の減量期だ。同メディアに対し彼は、カロリーを制限することによる頭に霧がかかったような状態(ブレインフォグ)と闘いながら、激しいアクションシーンをこなさなければならなかったと明かしている。撮影の合間にセットを転換するわずか10分の休憩時間でさえ、外へ走って出てアサルトバイク(全身運動ができるフィットネスバイク)を全力で漕ぎ、また戻って撮影を続けるという日々を約5ヶ月間も続けたのだ。

雑誌「PEOPLE」の記事では、ニコラスはこの過酷なトレーニングについて「今まで経験した中で最も難しいことだった」と振り返っている。急激な肉体の変化により自分の服が着られなくなり、ベッドの端にへこみができるほど巨大な身体を手に入れた彼は、数ヶ月後に現場に現れた際、周囲のスタッフを完全に驚かせた。

ニコラスの起用は、決して「今が旬のイケメン俳優だから」といった表面的な理由ではない。心に傷を抱えながらも前を向くアダムの人間ドラマを深く描くためには、彼の持つ繊細な演技力がどうしても必要だった。こうした監督の強いこだわりからも、本作が単なるアクション映画にとどまらない、ドラマとしての奥深さを持っていることがうかがえる。

初めて自分を信じられた瞬間。「I have the Power!」に込められた涙の理由

光り輝くパワーソードを両手で高く掲げ、天を仰ぐ主人公アダム(ヒーマン)
ただの呪文ではなく、アダムが初めて自分の価値を認めた「自己肯定」の魔法。現場が涙に包まれたという感動の変身シーン。
Image: Masters of the Universe | First Look – Featurette / YouTube 2026年6月2日閲覧

誰もが共感できる、弱さを乗り越える「自己肯定」の魔法

ヒーマンを象徴する変身のセリフ「I have the Power!(我が手にパワーを!)」。本作においてこの言葉は、単なる変身のための呪文ではなく、ずっと周囲から存在を否定され続けてきたアダムが、初めて自分自身の価値を信じ、強大な力を受け入れる「自己肯定」の言葉として非常にエモーショナルに描かれている。

ガリツィンは、このシーンを撮影する際、リアルな生の感情を引き出すためにあえて事前の練習を最小限に留めた。エンタメ系YouTubeチャンネル「Jake’s Takes」のインタビュー動画によると、彼はこのセリフがアダムにとって自己を肯定する初めての瞬間であると捉え、作られたものではない純粋で嘘のない感情を表現したかったのだと同メディアに対し語っている。

その試みは見事に成功し、本番の撮影現場は深い感動に包まれた。エンタメ系YouTubeチャンネル「DC Film Girl」のインタビュー動画において、トラヴィス・ナイト監督は、ニコラスが初めてそのセリフを発した瞬間を振り返っている。現場は静まり返り、監督自身だけでなく、周囲で見守っていた多くのスタッフたちも感極まって涙を浮かべていたという。ニコラス本人も演技の直後に感情が高ぶり、歩み寄ってきた監督と熱いハグを交わしたと明かしている。

圧倒的な力を持つ無敵のヒーローではなく、弱さや傷つきやすさを抱えた青年が、勇気を振り絞って自分を信じて立ち上がる姿。エンタメ情報番組「Entertainment Tonight」のインタビュー動画によると、ニコラスは弱さこそが一種のスーパーパワーであり、自分を信じて力を得るその姿が現代の若者たちにも伝わってほしい重要なメッセージであると語っている。

まとめ:強さだけではない、弱さを知る者が手にする本当の勇気

本作は、筋肉隆々の戦士がただ悪を打ち倒すだけの単純なアクション映画ではない。孤独や弱さを抱えながらも自分自身の価値を認め、一歩を踏み出す勇気を与えてくれる、エモーショナルな成長の物語だ。

気弱なアダムと最強のヒーマンという全く異なる二面性を、魂を込めて繊細に演じ分けたニコラス・ガリツィンの演技は、観る者の心を強く揺さぶる。「自分には何もない」と思い悩む現代の私たちにこそ響く、自己肯定の魔法と本当の勇気が詰まった変身のドラマとなっている。