またペッタスは同インタビューで、高校時代に出会った一冊の本が大きなインスピレーション源になったと語っている。それは、ベトナム戦争の帰還兵であるティム・オブライエンの回顧録『The Things They Carried(邦題:兵士たちの荷物)』だった。生と死、暴力や戦争の倫理を美しく、かつ生々しく描いたその文体に強い衝撃を受けたペッタスは、自身が愛してやまない恐竜の要素をベトナム戦争の泥沼のジャングルへと融合させるという、独自のアイデアをひらめいた。
2017年、ペッタスが22歳の時に自主出版された原作小説は、大手の出版社や配給元の支援を受けることなく世に送り出された。ペッタスはVoyage LA Magazineに対し、大学の学位を持たなかったためフルタイムの肉体労働で資金を稼ぎ、その全額を著名な古生物アーティストへのイラスト委託費用に充てて宣伝活動を行ったと明かしている。この地道な活動と徹底的なこだわりがファンの間で瞬く間にカルト的な人気を博し、後の映画化へと繋がる強固な土台を築き上げた。
この性別の変更は、単にスクリーンに華を添えるための安易なハリウッド的配慮ではない。ルーク・スパーク監督はCritical Drinker After Hoursのインタビューにおいて、登場人物が男性ばかりだった原作に、心理的な緊張感と劇的なレイヤーを加えるために性別を入れ替えたと語っている。ソフィアは単なる悲劇のヒロインではなく、原作のアンドレイが抱えていた「狂気」をそのまま受け継いでいる。彼女は過去の凄惨な体験によって深刻なトラウマを負っており、逃亡先の過酷な環境で生き延びるためにモルヒネに深く依存している。
戦場で怪我を負った兵士が苦しんでいる最中にも、自分の薬物欲しさに必要な医療用のモルヒネを盗んで逃げ出してしまうという、極めて身勝手で信用できないお荷物ガイドとしての異常なキャラクター性は、映画でも忠実に描写された。ソフィアを演じたヘルファーはTemple of Geekのインタビューで、従来の映画に登場する平坦で退屈な女性像とは一線を画す、モルヒネ中毒で不安定な精神を持つソフィアの多面的なキャラクター性を再現することに努めたと明かしている。極限状態の戦場に狂気とドラッグに溺れた女性が混ざることで、兵士たちとの間に生々しい不信感と息詰まる心理的摩擦が発生し、作品全体のサバイバル要素を引き締めている。
テスト試写での「ただのワニ映画に見える」という観客の不満を解消するため、撮影済みのシーンを急遽スピノサウルスへと丸ごと差し替えるというインディーズ映画として最大の意思決定が下された川のシーン((C)SPARKE FILMS PTY LTD ALL RIGHTS RESERVED 2025)
Image: Primitive War | Official Theatrical Trailer / YouTube 2026年8月5日閲覧
そこで監督は、ポップカルチャーメディア『Supanova Comic Con & Gaming』に対し、ニューヨークのアメリカ自然史博物館にある全身骨格標本と、ロサンゼルス自然史博物館に展示されている細長く伸びた頭骨の標本をベースにして独自のT-Rexを構築したと説明している。さらに監督はMovielandのインタビューの中で、「成体のT-Rexには羽毛がなかった可能性が高い」という近年の最新学説を考慮し、映画版ではあえて羽毛なしのデザインに切り替えたと明かした。
一方で、本作を象徴するもう一種の主役であるユタラプトル(劇中に登場する隻眼の個体「サイクロプス」など)には、原作に準拠して美しい「羽毛」が完全に再現されている。Supanova Comic Con & Gamingの同インタビューで監督が明かしたところによると、VFXスタジオや外部のアーティストたちからは「羽毛のCG処理は難易度が高すぎるため避けるべきだ」と強く反対されたものの、他の映画とのビジュアル面での差別化と原作への忠実さを優先し、粘り強くレンダリングをやり遂げてユタラプトルを際立つマスコットキャラクターへと仕上げた。
エンタメメディアVarietyの独占報道によると、映画第2作となる『Primitive War 2』は現在後期開発段階にあり、2027年の公開をターゲットに準備が進められている。スパーク監督は同メディアに対し、前作が「発見」の物語だったのに対し、続編は「エスカレーション(激化)」の物語になると明かした。映画版の続編では、再びベトナムの紛争地域を舞台にしながらも、前作の直後のタイムラインを引き継ぎ、複数の頂点捕食者の競合や、冷戦下における大国の秘密裏の政治的思惑が絡み合う、よりダークでリアルな軍事サバイバルホラーが展開される予定だ。